「強すぎ」「悲痛すぎる」思わずツッコんだ…インパクト大な「まさかのアニオリ展開」
■その強烈な描写の数々に作者も困惑?…『鋼の錬金術師』
“アニオリ展開”のなかには、視聴者にトラウマ級のインパクトを与えた強烈なエピソードも存在する。なかでも荒川弘さんの大人気ダークファンタジー漫画『鋼の錬金術師』の2003年版のアニメでは、とあるキャラクターのあまりにも悲痛な“その後”が描かれ物議を醸した。 それが、リオールの町で出会うこととなる少女・ロゼだ。作中の新興宗教、レト教の信者として登場する彼女は、アニメ版では多少容姿の変更があったものの、基本的には原作同様の明るい少女として描かれていた。 主人公のエドワード・エルリックたちは「合成獣(キメラ)」に変えられたロゼの恋人を撃破。そして旅立つエルリック兄弟をロゼが送り出すのだが、彼女はその後、変わり果てた姿でまさかの再登場を果たすこととなる。 実はロゼは軍部に連行されて暴行を受け、そのショックから声を失い、喋れなくなってしまっていた。しかも父親がわからない赤子を抱いており、かつての快活さは微塵も感じられない。 アニメ化にあたり設定が変更されたキャラクターは多数いるものの、この数々の“負”の描写は原作ファンに大きなショックを与えた。この展開には原作者の荒川さんも「私が目指す少年マンガにおける娯楽の範囲から逸脱していた」とコメントしており、これがいかに衝撃的な展開だったのかを物語っている。 あまりの衝撃的な展開に、ファンの間ではトラウマ級のアニオリエピソードとして語り継がれることとなった。
■取り残されたその姿に思わず視聴者も涙…『巨人の星』
“アニオリ展開”では、キャラクターのちょっとした日常が描かれることも少なくはないが、どこか物悲しい描写でファンを涙させたのが、原作:梶原一騎さん、作画:川崎のぼるさんのタッグが手掛ける名作野球漫画『巨人の星』のアニオリエピソードだ。 野球一筋で育った熱血漢・星飛雄馬が数々の強敵たちと激闘を繰り広げていく本作において、飛雄馬の不器用な日常シーンが描かれるのが、アニメ版第92話「折り合わぬ契約」なるエピソードである。 これまでひたすら野球に時間を費やしてきた飛雄馬だったが、アームストロング・オズマに「野球ロボット」呼ばわりされたことで、自身の生き方に疑問を持つようになってしまう。 この言葉をきっかけに必死に失った“青春”を取り戻そうと奔走する飛雄馬は、知り合いらに声をかけ、大きなケーキやチキンを用意した“クリスマスパーティー”を開くことを計画するのである。 しかし、招待したはずのライバルたちは飛雄馬と慣れ合うことを良しとせず、あえてこの誘いを断ってしまう。挙句、招待していた明子からも欠席の電報を入れられてしまい、なんとパーティーには誰一人としてやってこないのだ。 一人ぽつんと取り残された飛雄馬は、脳裏に響き渡る「野球ロボット」の言葉と物悲しさに耐えきれず、涙を流しながら大暴れ。料理やケーキはもちろん、テーブルや椅子、窓ガラスまで破壊し、会場をめちゃくちゃにしてしまった。 飛雄馬が自身の生き方に苦悩する不器用な姿と、そのあまりにも物悲しい結末が思わず視聴者の涙を誘う、なんとも印象的な“アニオリ展開”だった。 原作にはない新たな展開や描写で作品の世界観を広げてくれる“アニオリ展開”。ときにはその強烈過ぎるエピソードで原作ファンを驚愕させてしまうことも珍しくはないが、キャラクターの思わぬ一面を垣間見ることもできるのも、アニオリならではの醍醐味だといえるだろう。 驚きの展開によって今もなおファンの心に焼き付いた数々の“アニオリ展開”を、ぜひご自身の目で確かめてみてほしい。
創也慎介