賃貸住宅の“給湯器”が壊れ連絡、管理会社の塩対応を“即対応”へ変えた法律用語がSNSで話題に…「設備故障に伴う家賃減額」って?
給湯器やエアコンといった賃貸物件に備え付けの設備が前触れなく壊れ、頭を抱えたことのある人は少なくないのではないか。 【元の投稿】「ソッコー修理に来てくれることになったね なんで??」 今年6月、X上で「給湯器が壊れた」というkimijimaticさん(@image_jpeg)の投稿が大きな話題を呼んだ。話題となった理由のひとつは、kimijimaticさんが管理会社に対し、設備故障などによる“家賃減額”を取り決めた民法上の保障を主張していたためだ。 〈給湯器がいきなり壊れちゃって管理会社に電話したら「交換用の給湯器が手に入らないのでいつ修理できるかわからない」とか言われて詰んだ~と思ったんだけど、「ではホテルに泊まるので民法611条の家賃減額で相殺してください」と伝えたらソッコー修理に来てくれることになったね なんで??〉 この投稿はX上で約1500万回表示され、14万件のいいねがついた(2024年8月現在)。 投稿者のkimijimaticさんは、取材に対し、ここまで大きな話題になるとは思っていなかったとしつつ、「対応してくださった管理会社を責めるつもりもなく、スパムリプライ等も多かったことから投稿を削除しようかとも思いましたが、X上での反応を見て『設備故障に伴う家賃減額』について知らない方がとても多いと感じ、投稿内容が誰かの役に立つかもしれないと思いそのままにすることにしました」と話す。
設備故障で家賃が減額?
実際にこの投稿を見て、「賃貸住宅における設備の故障に伴う家賃減額」について調べたという人もいるだろう。 2020年4月より施行された「改正民法」では、借主に責任がある場合を除いて、貸室・設備等の一部滅失(故障など)によって、通常の居住ができなくなれば、家賃がその滅失部分の割合に応じて減額されることとされている(民法611条1項)。 宅地建物取引士と管理業務主任者の資格を持つ貝吹仁哉弁護士によれば、同条項については、実は改正以前から、賃借物が一部滅失した場合には当然に賃料債務が減額されるというのが通説的見解であり、改正法はこの考え方を維持しつつ、賃料減額の対象となる場合を一部滅失に限らず「使用および収益をすることができなくなった場合」と定め、通説を明文化したものであるというのが主な見解だという。 実際の減額割合や免責日数については、民法改正を受けて公益財団法人 日本賃貸住宅管理協会が「貸室・設備等の不具合による賃料減額ガイドライン」 を作成し、あくまでも目安と注意書きをした上で一般公開している。 しかしもちろん、どのような不具合であっても家賃減額の対象になるという訳ではない。 具体的に、家賃の減額措置が認められる例として「電気・ガス・水道が使えない」、「トイレ・風呂が使えない」、「エアコンが作動しない」「雨漏りする」などがあげられるが、電力会社、ガス会社、水道局といった供給元が原因である不具合の場合には減額対象にはならないと、貝吹弁護士は説明する。 「建物が老朽化していることを前提として初めから賃料を安く設定する場合もあるでしょうから、多少不便であるとか見栄えが悪い程度の壁や窓の破損であれば賃料の減額にまでは至らない可能性があります」(貝吹弁護士)