米高官がシリア旧反体制派トップと初会談 穏健姿勢を評価
米国務省の高官が20日、シリアの首都ダマスカスを訪問した。暫定政権を主導する旧反体制派「ハヤト・タハリール・シャム」(HTS)のジャウラニ指導者と初めて会談し、政権移行などについて協議した。 【写真特集】アサド政権崩壊後のシリアを歩く ダマスカスとその近郊 国務省によると、アサド政権と対立してきた米国の高官の訪問は2012年以来。米政府は、国際テロ組織アルカイダ系を前身とするHTSをテロ組織に指定しているが、対話を本格化させることで穏健な政権運営を促し、安定化に道筋をつける狙いがある。 米側は今後も対話を重ね、HTSの出方を注視しながら、テロ指定の解除や新政府の承認などを検討していくとみられる。 米高官は会談後の記者会見で、「とても生産的だった」と評価。米政府はジャウラニ氏を「特別指定国際テロリスト」に指定しているが、高官はジャウラニ氏に対して、同氏に関する情報提供の報奨金(最大1000万ドル=約15億6000万円)を取り下げると伝えたことを明らかにした。 ダマスカスを訪問したのは、中東担当のリーフ次官補のほか、近東局のルベンスタイン上級顧問、カーステンス大統領特使。 リーフ氏は会見で、HTS側に対して、新たな政府が他の勢力も含んだ「包摂的」であることや、テロリストが脅威を与えるような事態にならないよう保証することなどを求めたと説明。過激派組織「イスラム国」(IS)への対応についても協議した。ジャウラニ氏は穏健な姿勢を見せたといい、「良い初会談だった。我々は言葉だけでなく、行動で判断する」とも述べた。 また高官はダマスカスで、民間ボランティア組織・シリア民間防衛隊「ホワイトヘルメッツ」のメンバーらとも面会し、米国の支援について話し合った。 新政権の樹立に向けて米政府などはHTSに対し、女性や少数派の権利擁護▽人道支援の受け入れ促進▽近隣諸国と平和的な関係を築くこと▽化学兵器の安全な処理――などを求めている。【ワシントン松井聡】