富士通とNECの2024年度第2四半期受注状況から探る「国内IT需要の行方とリスク」
「受注の力強い勢いを感じている」(NEC)
NECが2024年10月29日に発表したITサービスにおける2024年度第2四半期の国内受注状況は、全体で前年同期比17%増、変動の大きいNECファシリティーズを除くと同18%増と好調に推移した。同社は今回、受注については上期分を表示せず、第2四半期の結果のみを公表した。 業種別では、パブリックが前年同期比38%増と大幅に伸長し、エンタープライズが同2%増、その他も同15%増と伸びた。エンタープライズの内訳では、製造が同11%増、流通・サービスが同14%増と伸長したものの、金融は同11%減となった(表2)。 この受注状況について、同社 取締役 代表執行役社長 兼 CEO(最高経営責任者)の森田隆之氏は会見で次のように説明した。 「第2四半期は第1四半期に続いて旺盛な需要により大幅に増加した。業種別では、パブリックが大型案件や自治体システムの標準化案件により大幅に増加した。大型案件を除いても前年同期比約10%の増加となった。エンタープライズの内訳では、金融向けが同11%減だったが、前年同期に獲得した大型案件を除くと増加に転じており、引き続き好調を維持している。製造はDX関連の案件が増え、流通・サービスも大型案件を獲得するなど好調に推移している。その他も子会社のアビームコンサルティングが好調に維持している」 今後の需要については、「足元の受注は第1四半期から継続して好調に推移しており、今後も力強い勢いを感じている」(森田氏)とのことだ。会見に同席した同社 取締役 代表執行役 Corporate EVP 兼 CFOの藤川 修氏も、「2024年度については売上に計上できる有効受注残も前年度より4~5%高く推移している。業種別では、金融において引き続き旺盛な需要があると実感している。一方で、流通・サービスにおいては大型案件によって好調だが、さらに大型以外の案件を獲得できる機会も多々あるようなので詰めていきたい」と述べた。 今後の受注にマイナスの影響を与えるリスクについて富士通の会見時と同様に質疑応答で聞いたところ、森田氏は次のように答えた。 「旺盛な需要に対応できるリソースをしっかりと確保できるかどうか、心配している」 このように、リスクについては富士通の磯部氏と全く同じ答えが返ってきた。リソースとは、ヒトやモノ、カネなどの経営資源を指すが、両者とも意図しているのは「人材」だ。逆に人材を確保できれば、仕事はいくらでもあるという状態だといっていい。この点は、両社に限らず、全てのITサービス事業者に当てはまるようだ。 実は、リスクについて、国際情勢や経済動向など外的な動きにおける懸念はないかと聞いたが、富士通の磯部氏およびNECの藤川氏とも異口同音に「国内のIT需要に対し、短期的にネガティブな影響を及ぼす動きは今のところ見当たらない」との回答だった。 折しも2024年11月5日(現地時間)に米国大統領選が投票日を迎える。結果によって、国際情勢や経済の動きが大きく変わる可能性がある。そうなると、国内のIT需要にも影響が出るのではないか。 リソースの懸念はあるものの、国内のIT需要は今、DX特需・AI特需といえる活況だ。ただ、良い時には得てして落とし穴が待っている。数少ない見方かもしれないが、筆者はそのリスクを注視していきたい。 著者紹介:ジャーナリスト 松岡 功 フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT/デジタル」の3分野をテーマに、複数のメディアで多様な見方を提供する記事を執筆している。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌編集長を歴任後、フリーに。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。1957年8月生まれ、大阪府出身。
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