“なにわのルチャドール”晴斗希の人生を変えたバンクーバー留学と給付奨学金制度【週刊プロレス】
メキシカンスタイルのプロレスラーを目指した晴斗希少年は、空中殺法の基礎を身につけるべく器械体操部のある高校を志望。見事、合格して入部したが、決して順風とはいえないものだった。今回は高校時代を振り返る。 【写真】変型エル・モメント・デ・ムエルテで晴斗希は潮崎豪から3カウントを奪取
大阪プロレスのツバサに魅せられ、和製ルチャドールの道を目指した晴斗希少年。高校進学後に器械体操部に入部したものの部員は少なく、3年生の先輩はいたものの2年生はゼロ。同級生で晴斗希以外に2人入部しただけ。しかもその同級生も6月に退部。夏休みで3年生が引退し、晴斗希たった1人となった。2学期からは1人で練習していたが次第に不安になっていき、他校への編入も考え始めた。 一方で語学に興味があったことから留学も考えていた晴斗希少年。タイミングよく留学に給付奨学金を給付する制度がスタート。担任からの紹介もあって、その制度を利用して渡航することにした。 「面接があったんですけど、合格してしまって(苦笑)。これまでは後ろに隠れていた感じだったのが、やりたいことを言葉に出して頑張れば実現できるんだって、初めて自分に自信を持ちました。振り返れば、それが自分の人生の中で大きなターニングポイントでしたね」 文部科学省に出向いて、合格証を受け取ったという。ちなみに当時の大臣は下村博文氏。馳浩氏の1代前。「馳さんだったら面白かったんですけどねえ。1年早かったんです」と笑う。 その面接では「将来、世界に通用するプロレスラーになりたい。そのために英語をマスターしたい」と人生設計を伝えた。 留学先はカナダ・バンクーバー。3週間の滞在だったが、現地では語学学校に通った。ホームステイ先もアジア系のファミリーで歓迎された。ちなみに、のちにバンクーバーに遠征して試合をしているが、「なんか不思議でしたね。そのファミリーの方はもうバンクーバーを離れていて会えなかったんですけど、同じホームステイをしてたメキシコから留学してきてた高校生とはメキシコに修行に行ったときに観戦に来てくれました。なんか運命を感じますね」と振り返る。 部活動でも主将になり、一つひとつが自信につながっていき、さまざまな経験を経て性格も変わっていった。最終的には卒業式で答辞を読むことになった。 高校卒業と同時にメキシコに渡り、現地でルチャドールになろうと考えた晴斗希少年。現地でデビューしたツバサやビリーケン・キッド、政宗などの意見を聞いて、「メキシコに行くんだったら、スペイン語を勉強しておいた方がいい」と感じ、スペイン語学科のある大学への進学を選択。そして関西外国語大学に入学した。 しかし、小学生時代に担任から「お前が? プロレスラーになれるの?」と言われたことが心の憶測に深く残っていた。そこで「そういう目標を応援してあげられる先生がもっと増えたらいいのに」と思い、教員免許取得も目指した。 大学入学後、一時、落ち込んだ時期もあったが、19歳になった1月、「今しかない!」と思い立って、メキシコ行きを決めた。ただ、プロレスラーへの夢を半ばあきらめかけていたころで、「現地に行って、自分が好きだったルチャ・リブレを見てどう思うか」。ある意味、プロレスラーへの夢に区切りをつける何かを求めていた思いもあった。 「だから航空券だけ予約して、現地での宿も、練習するところも手配せずに空港へ向かったんです」 そしてメキシコ行きの便に搭乗しようとしたところで、思わぬ出会いが待ち受けていた。(つづく) 橋爪哲也 <プロフィル> 晴斗希(はるとき)/本名・非公開。98年12月14日生まれ、大阪市出身。高校時代は器械体操に打ち込む。卒業後、単身メキシコに渡り、2018年3月3日(現地時間)ダイナミック・フライ、ブラック・ストゥルエンド相手の3WAYマッチでデビュー。帰国後、道頓堀プロレスに所属する。菊池悠斗との生え抜きコンビで20年、22年の「道頓堀最強タッグキング」に優勝。WDWシングル&タッグ2冠王者に輝くも、23年9月の同団体10周年記念大会でタッグパートナーである菊池に敗れてシングル王座から転落。24年3月からNOAHに限定参戦。現在は岩崎孝樹とのコンビでWDWタッグ王座を保持する。得意技は、エル・モメント・デ・ムエルテ、クルス・メヒカーノ。180cm、85kg。
週刊プロレス編集部
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