ドライバー不足で「修学旅行」がドタキャンってマジか! 「働き方改革」はバス業界にもバス利用者にも大打撃を与える「愚策」か
多くの路線バスが廃止に追い込まれた
働き方改革と称されて始まった、物流の2024年問題。なかでもトラックドライバーへの影響が懸念されており、これまでのように荷物が届かなくなる可能性や、ドライバーの収入低下が問題視されている。しかし、その弊害を受けているのはトラックだけではない。トラックと同様に人手不足にあえいでいるバス業界も大きな打撃を受けている。 【写真】なにかラッキーなことある? たまに見かける「宝くじ号」ってなんだ? 2024年問題とは、「時間外労働の上限規制」やその他の関連法における労働基準の見直しによって生じる、さまざまな問題の総称。2019年より施行されている「働き方改善関連法(改正労働基準法)」によって規定された法律で、自動車運転者の長時間労働を防ぎ、労働条件の向上を図るために設けられた。 労働時間を制限するということ自体はとても素晴らしいことだといえるだろう。しかし、それはこれまでと変わらぬ給料や人材が保証されていればの話。もちろんそんな保証は存在せず、ただ労働時間だけを制限するというのだから恐れ入る。 人手不足に悩まされているバス業界では、市民の足だったはずの路線バスがあちらこちらで廃止されるという由々しき事態に陥っている。それも過疎地域だけでなく、東京都や大阪府下でも起きているというのだから、事態の深刻さがおわかりいただけることだろう。 そんな廃止となった路線バスの代わりにレンタカーナンバーのハイエースなどが運用されているケースもあるようだが、そのような対策すらいつまで続くかわからない。人手不足に悩まされているトラックやバス業界を苦しめる結果になっている2024年問題は、わたしたちの暮らしにも大きな影響を与えているのである。
ドライバー不足により修学旅行が中止
そして、その影響は観光バスにも広まっている。先日も大手メディアによるニュースでも伝えられたが、ドライバーが用意できないために修学旅行がドタキャンされたというのだ。その理由として挙げられたのが2024年問題。昨今のドライバー不足や時間外労働時間の制限により、貸切バスが手配できなかったというものだ。この例の場合は列車に切り替えたことで大きな問題を避けることができたというが、このようなケースはこれからも大いに想定されることだろう。 しかし、その背景にはほかの理由も隠されていた。とある観光バス会社の社長が、その内情を話してくれた。 「修学旅行のドタキャン騒動についてですが、ドライバー不足や時間外労働時間の制限による影響はもちろん、大きいでしょう。2007年に起きた大きなバス事故によって規制が厳しくなりました。加えて尖閣諸島問題によって中国からの観光客が大幅に減少した時期もあって、貸切バス事業者は撤退や減車を余儀なくされたんです」。 「そして現在です。いま大幅な円安ですから、外国からのお客様がとても多いのです。俗にいうインバウンドですね。貸切バス業者は、そちらの確保を優先しているフシがありますね。学校関係は運賃が安いですから稼げるインバウンド客を優先するのも致し方ないことだと思います。ウチではそんな不義理なことはしませんが、この問題をクリアするためには国が学校関係の運賃を一部補助して、底上げするのが一番かもしれません」。 「なかにはありえないほどの高額設定でバスを動かしているような業者もありますが、貸切バス業界でもドライバーが出社や帰社した際に対面で安全確認をしなければならなくなりました。貸切バスの場合はドライバーの出社時間が早朝なんていうのはザラですし、深夜に帰社するなんていうのも当たり前のようにありますから。つまり、24時間体制に近いため、ドライバーとは別に事務所にひとり滞在させておかなければならなくなったのです。8時間交代としても3人が必要になりますからかなりの痛手ですね」。 人手不足の業界に追い打ちをかけているだけのようにも感じるこのような事態は、いつまで続くのだろうか。いまのところ働き方改革ならぬ改悪になっている感が否めないが、今後はその対策に向けて、行政側の意識改革に期待したい。
トラック魂編集部