ヒゲダン、ミセス、ユニゾン……『アオのハコ』『忘却バッテリー』『ブルーロック』などスポーツアニメ×バンドの相乗効果
10月スタートのTVアニメ『アオのハコ』(TBS系)のオープニング主題歌に、Official髭男dismの新曲「Same Blue」が起用されることが明らかになった。 【写真】ヒゲダン、1年半ぶりのライブでファンの前へ 近年アニメ作品の主題歌には時代を代表する人気アーティストが起用され、単なるタイアップにとどまらず、作品に深く関わるような楽曲をリリースすることが定番化している。映像作品において主題歌に託された役割もそれだけ大きく、制作側も力を入れているということだろう。今回は、スポーツジャンルとバンドサウンドの関係性に触れてみたい。 スポーツを扱うフィクションの魅力のひとつに「起きている出来事と並行して、キャラクターたちの思考や心理状態が詳細に描写される」という要素がある。スポーツをプレイしているシーンなどは、それを観戦するような感覚と同時にキャラクターの視線や心の動きを追随することができる重要なポイントで、ここが丁寧に描かれることは、フィクションならではの面白さであり醍醐味だと言えるだろう。特にアニメーションにおいては、色合いや音の効果、間合いまで加わり、繊細な表現が可能となる。 その点でも、音と言葉で心の機微を描くことに定評があるアーティストを主題歌に起用することは、アニメーションという二次元の表現に広がりを持たせることにも繋がる。オープニング曲が作中の中盤に差し込まれたり、オープニングとエンディングの楽曲が置き換わったりする演出がこれまでもさまざまな作品で行われてきたことを鑑みても、アニメ作品における主題歌の役割はかなり大きい。TVアニメ『忘却バッテリー』(テレビ東京系)のオープニングを飾ったMrs. GREEN APPLE「ライラック」は、“青春”の透明度や色鮮やかさを痛みとともに描きながら、最終的に深い自愛へ着地する。この曲で物語の幕が開くことは、作品とバンド、双方のファンにとってドラマチックな体験だったのではないだろうか。 スポーツを扱う作品のもうひとつの特徴に、その性質ゆえに多くのキャラクターが登場することで「話によってスポットの当たる人物が変わる」というものがある。主人公の心情を音楽から読み解くだけでなく、他のキャラクターの視点から主題歌を聴くことで理解が深まることもあるだろう。少し前だとTVアニメ『ハイキュー!!』(MBS・TBS系)は、長きにわたりアニメファンとさまざまなアーティストを結び付けた。多くのキャラクター全員に熱心なファンがいる人気作品において、多彩な音楽がキャラクターの心情や物語の根幹にマッチし、寄り添った結果と言えるだろう。 近年だとTVアニメ『ブルーロック』(テレビ朝日系)でも、多くのキャラクターと音楽の化学反応が見られたように思う。本作で主題歌を務めたUNISON SQUARE GARDENは、過去にも『TIGER & BUNNY』(MBS・TBS系)や『血界戦線』(TOKYO MXほか)など多くのアニメ作品に名曲を書き下ろし、音楽としての唯一性とアニメ主題歌としての完成度を共存させてきたが、スポーツジャンルである『ブルーロック』においては音楽の複雑性とキャラクターたちとのシンクロをより感じさせた。「カオスが極まる」「Numbness like a ginger」によって、作品を多方向からフォーカスし、エッジの効いたキャラクターたちを理解し(または理解せずとも)深く見つめることができた人も少なくないだろう。