アニメキャラの魂は“声”か“絵”か 「声優変更」が「キャラデザ変更」以上に論争を呼ぶ理由
2022年に劇場版もヒットした人気アニメの最新シリーズ『ゆるキャン△ SEASON3』の放送がこの春から始まった。SEASON1から劇場版の制作までを担当したC-Stationから、SEASON3の制作を引き継いだのは、『ヤマノススメ』などで知られるエイトビットだ。 【写真】『ゆるキャン△ SEASON3』キャラ設定画 制作会社が変わった影響もあり、キャラクターデザインなど絵柄のテイストが前シーズンまでとは異なっており、全体的に大人びた印象を受ける。劇場版では大人になったなでしこたちが描かれたが、今期は再び高校時代の話ではあるのに、大人時代の彼女たちより大人びて見える時もある。 とはいえ、各キャラクターが別人と認識するほど大きな変化があったわけではなく、あくまで絵柄の方向性の変更であって、多少テイストは異なるものの作品の魅力は充分に表現されている。制作会社や監督、主要スタッフが変われば作風にも何らかの影響があるのは当然のことで、こうしたことはアニメ業界ではこれまでにも度々あった。絵柄の変更は多少なりとも議論にはなるが、概ね視聴者は慣れていく。比較するとSEASON3のデザインはより原作に近づいたとも言える。 絵柄の変更以上に、昨今大きな議論の的となるのは声優の変更だ。アニメとは絵で描かれたキャラクターが動き、それに人が声の芝居をつけるもので、アニメーターと声優はともに演技を作る役者である。映像作品は一般的に視聴覚メディアであり、絵と音で構成されるが、アニメというのはその2つを分離して作るものである。同じ肉体から動きと声を発する生身の俳優を用いる実写とはそこに違いがある。このことは、アニメのキャラクターの魂はどこに宿るのかという問いを生んでいるのではないか。 生身の俳優が演じる実写映画において、登場人物の魂がどこにあるのかと問う必要はない。全ては俳優が体現しているからだ。しかし、ボディと声を分離して制作するアニメにおいて、キャラクターの魂はどこにあるのか、これは結構ややこしい問題かもしれない。