ソフトクリーム老舗の高級版「クレミア」 誤算ブーム、その内幕
ソフトクリーム市場に革命を起こした「CREMIA(クレミア)」をご存じだろうか。誕生から2024年で12年目を迎えるが、まだ知る人ぞ知るスイーツだ。500円以上の高級路線を切り開き、全国で約1700店が取り扱うまでになった。しかしこの人気ぶり、実は開発陣も誤算の結果だったという。 【関連画像】このイラストに見覚えがある人は多いはず。「ニックン&セイチャン」という、ソフトクリームのトップメーカー「日世」(大阪府茨木市)のイメージキャラクターだ 日本全国で消費されるソフトクリームは年間約5億本に上る。その市場を制するトップメーカーが日世だ。 原料となる「ミックス」「コーン」、そして店頭でソフトクリームを製造する「フリーザー」の3つ全てを製造・販売する国内唯一の企業で、いずれもシェアは6割を超す。同社のソフトクリームは約3万店で扱われているが、納入した店舗のブランドとして販売されるため社名が表に出ることはほとんどない。 そんな業界の王者である日世が2013年に販売をスタートしたのが「クレミア」だ。価格は500円以上で販売されることが多く、サービスエリアの売店や大手カフェチェーン店など約1700店が取り扱う。参考までにお伝えすると、アイスクリーム店として抜群の知名度を誇る「B-R サーティワン アイスクリーム」の国内店舗数は約1200店だ。 ただ、これほど拡大するまでになったのは、実は同社にとって誤算だった。 ●「ソフトクリームの味はどれも同じ」 そもそも日世がクレミアを商品化したのは、高いシェアを持つ自社でも決して心を奪えない消費者の存在に気づいたからだ。きっかけとなったのは10年に始まった新商品開発プロジェクト。方向性を決めるため1000人規模の消費者調査を実施したところ、20代から30代の働く独身女性には、そもそもソフトクリームそのものを訴求できていない状況が明らかになった。 「甘いものにお金を一番使うはずの彼女たちに『ソフトクリームの味はどれも同じ』と思われている。この事実は当社にとって衝撃的だった」。そう語るのは日世経営企画部の松島寛明氏だ。 さらに当時は「極端に安くて品質は相応の商品」と「高品質・高価格の商品」がそれぞれ好まれていて、消費の二極化が目立ち始めていた。こうした背景から日世が開発の照準に定めたのが、高級ソフトクリームだった。