<独占インタビュー最終回>カヌー銅の羽根田が抱く東京五輪金メダル構想
――スロバキアには、いつまで? 「現役中には、ずっといるつもりです」 ――カヌーは選手寿命の長い競技らしいですね。 「30代の中盤まではトップ選手がいます。やはり技術系のスポーツで、経験が大きなファクターを占める競技ですからね。競泳などフィジカルが結果に直結するスポーツでは、年齢と共に筋力も衰え、モロに影響が出るのでしょうが、技術系の選手は選手生命が長いんです。 それに僕は他の選手よりも、食事や生活も含めて体に気を配っています。不摂生は厳禁。睡眠時間は一番気にしていて、7時間から8時間は絶対に取ります」 ――では32歳で迎える東京五輪は通過点? それとも集大成? 「東京五輪の後は考えていません。カヌーという競技は、海外の強豪を見ても、30代の中盤まで十分にできますが、それ以上のレベルアップは難しく、いかに維持するかが重要になってきますが、東京五輪以降は、それも難しくなってくるでしょう。怪我も増えてきます。 そのときの成績次第でしょうが、僕の中では東京がゴールです。その後は、やるとしても“おまけ”みたいなもの。東京までは、まだまだレベルアップができます」 ――金を期待される東京五輪でのプレッシャーは半端ではなくなります。これまでマイナー競技だったが、羽根田さんの快挙でスポットライトを浴びることになったから、なおさらでしょう。大丈夫ですか? 「プレッシャーには弱くないと思っています。性格的に負けん気が強いんです」 ――銅メダルを獲得したことが、カヌーの普及につながればと考えているんですね? 「カヌーという言葉が、少し浸透したと思うんです。カヌーからスラロームに続く人が、そのうちの何パーセントかいればいいなあと。地道ですが、少しでも増えればと」 ――普及に必要な環境とは? 「まず人工コースができることですが、東京五輪でできるので、このコースを恒久的に使えるようにすることが重要ですね。後は底辺の拡大。カヌーをやる機会、やれる場所がどんどん増えることが大切だと思います」 ――こんなにストイックに打ち込むカヌーって楽しいですか? 「楽しいし、やらせてもらった。幸せなことです。練習は楽しいというより、精一杯。人生の中で目標にむかって生きていることが楽しいんです。夏は、涼しくて気持ちがいいですしね。 見てもらったら、わかると思いますが、ダイナミックな競技で、その中にも細かい駆け引きがあって面白いんです。アウトドアの楽しさも感じます。アウトドアから始めて、スラロームを始めると、多くの人がどっぷりとはまります(笑)」 ――そのスラロームの魅力とは? 「自然を操り、流れを操って、波を読みきった快感、ゲートをうまくくぐれた楽しさ、いろんな面白さがありますね。でも、自然の怖さも忘れてはいけません」 ――最後に臭い質問を。羽根田さんにとってカヌーとは何ですか? 「生きる目標。原動力です」 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)