「果物ナイフを首に突きつけ…うつになり始めた祖父が夜中に」高橋里華が直面した介護の現実「大きな後悔と引き換えに」
■「ひとりぼっちになってしまう」祖父が高齢者うつに… ── おばあさまの介護で、印象的だったできごとはありますか? 高橋さん:祖母が倒れた後、祖父がひどく落ち込んでしまって。祖母よりも祖父のほうが気がかりな状態でした。じつは、祖母は祖父とは再婚だったので、母や私、妹とは血縁がなかったんです。祖父は、祖母に万が一のことがあったら、「ひとりぼっちになってしまう」と不安を感じていたようです。 祖父の気持ちを察知して、「私がいるから大丈夫だよ」と、毎日声をかけていたのですが、とうとう祖父は「高齢者うつ(病)」になってしまいました。強い不安は排尿障害の症状として表れ、処方された薬を飲んでも、自力でうまく排尿できなくなったんです。
祖母が入院中だったある夜、祖父と実家にいたのですが、午前2時ころ、何だか胸騒ぎがして目が覚めて。祖父の部屋に様子を見にいくと、暗がりの中、祖父が果物ナイフを首に突きつけている姿が目に飛び込んできました。 ── えっ…?そこから高橋さんは、どうされたのですか? 高橋さん:とにかく止めなければと思い、「そんなことしたら、おばあちゃんは喜ばないし、私も悲しいよ?」と、優しく声をかけながら、ゆっくり祖父に近づきました。そして、「そばにいるから、大丈夫だよ」「それ(果物ナイフ)、私にちょうだい?」と、震えながら祖父に手を伸ばしました。
すると、祖父は果物ナイフを片手に、ゆっくりと近づいてきて。私は怖くて動けなくなり、「このまま、道連れにされてしまう…!」と思った瞬間、祖父は私の手にそっと果物ナイフを渡してくれました。 ── お話を伺っただけで、恐怖で体が硬直しました。その後、おじいさまはどんな様子だったのでしょう。 高橋さん:私も思い出すだけで、いまでも体が震えます。とりあえず部屋の明かりをつけて、「何でこんなことになっちゃったの?」と聞くと、祖父は「ひとりぼっちになってしまう」「トイレができず、迷惑をかけてつらい」と、ぽつりぽつり、胸のうちを明かしてくれました。