打倒“ロシア最強3人娘”も可能?!紀平梨花の4回転回避プログラムから読み解ける自信と成長
フィギュアスケートのGPシリーズ第6戦NHK杯の男女シングル、フリースケーティング(FS)が23日、札幌市・真駒内セキスイハイムアイスアリーナで行われ、女子では、ショートプログラム(SP)で世界最高得点をマークし首位のアリョーナ・コストルナヤ(16、ロシア)が、フリー154.96点で自己ベストの計240.00点で初優勝。SP2位から追った紀平梨花(17、関大KFSC)もシーズンベストの151.95点を叩き出したが、計231.84点でわずかに8.16点及ばすに2位に終わった。それでも2年連続で、日本人で唯一、12月5日からイタリア・トリノで行われるGPファイナル出場を決めた。GPファイナルでは、4回転を操りGPシリーズを共に連勝したアレクサンドラ・トルソワ、アンナ・シェルバコワの2人も合わせて“ロシア最強3人娘”が、紀平の前に立ちはだかる。4回転サルコーを回避した紀平は、その牙城を崩せるのだろうか?
FSでは、わずか3.01点差。計8.16点差で勝敗を分けた。 FSでは、コストルナヤは冒頭のトリプルアクセル+2回転トゥループの連続ジャンプに成功したが、続く単発のトリプルアクセルはステップアウト。一方、紀平は最後の最後で冒頭に予定していた4回転サルコーを回避したが、そこは3回転サルコーに変え、続いてトリプルアクセル+2回転トゥループの連続ジャンプに成功、3回転フリップ、ステップシークエンスを経て2本目のトリプルアクセルも綺麗に着氷した。紀平は単発のトリプルアクセルで基礎点8.00にGOEで2.51を稼ぐが、一方、コスタルナヤのそれはミスにより基礎点6.40、GOEマイナス2.74となり、紀平は4.34のリードを奪った。 しかし、得点が1.1倍になる後半に入れた紀平の3回転フリップ+3回転トゥループの連続ジャンプでは、後ろのジャンプがアンダーローテーションとなり、対するコストルナヤは、同じ連続ジャンプをミスなくこなした。これも紀平が基礎点9.53、GOEマイナス0.23で計9.30となってしまったが、コスタルナヤは基礎点10.45、2.27の計12.72で逆に、ここでは3.42差となった。それでも、まだ紀平がリードしていたはずだったが、終わってみれば、3.01差をつけられた。 なぜ紀平は勝てなかったのか。 元全日本2位で現在、福岡で後進を指導している中庭健介氏は、こんな見解を示した。 「私はコストルナヤがトリプルアクセルをステップアウトした瞬間に紀平さんが勝ったと思いましたが、3回転の個数がコンビネーションジャンプで行った第2と第3ジャンプを含めると、コストルナヤが8個で、紀平さんが7個。それとステップシークエンスのレベルの差でもわずかな差ができました。演技で行った要素の合計の基礎点の差が、そのまま両者の差になりました。決定的だったのは、右足首に故障を抱えている紀平さんが3回転ルッツを回避したことにあります。足が完調で3回転ルッツを組み込んでいれば、今日の紀平さんの要素の出来栄え点(GOE)、演技構成点からすると、フリーの点数は逆転していたのかもしれません」 紀平は、9月に右足首を痛めた。その影響から公式練習でアウトエッジの乗る2回転ルッツを跳んだ時にまだ痛みが残っていたため3回転ルッツをプログラムから外していた。後半にコストルナヤは、3回転ルッツを入れ、GOEを含み8.09点を稼いだが、紀平の後半の単独ジャンプは3回転ループで、こちらは6.23点に留まった。