個室で映画やネットも楽しめる? ヨーロッパの刑務所事情とは?
ベルギーの刑務所で4月から受刑者にインターネットへのアクセスが認められました。世界初の試みとなる受刑者のネット使用では、「塀の外」で私たちが普段インターネットを使って行っていることとほぼ同様の事が認められています。社会復帰のためにネットを使うというこのアイデア。はたして、ヨーロッパ全域に広がりを見せるのでしょうか? 【図】容疑者が海外に行ってしまっても引き渡しは可能なの?
SNSは禁止だがポルノ映画はダウンロード可能
ヨーロッパ各国にはどのくらいの受刑者が存在するのでしょうか? まず、日本とアメリカの数字を確認しておきましょう。法務省が公開している「矯正統計年報」の最新のデータによると、日本の受刑者数(刑務所・拘置所に収容されている受刑者)の総数は、今年2月の時点で約5万8000人。アメリカでは刑期や犯罪の種類によって「プリズン」か「ジェイル」のどちらかに収容されますが(通常はプリズンに重犯罪で有罪となった受刑者が収容され、連邦政府や州が運営を行っています)、2010年の時点で受刑者の総数が約227万人となっており、世界の受刑者数の約4分の1がアメリカに集中しているというデータも存在します。 英ロンドン大学バークベック校にある犯罪政策研究所(ICPR)はヨーロッパにおける受刑者数を国別に調査しており、65万人以上が刑務所などに収容されているロシアがヨーロッパでは断トツでトップとなっています。ロシアに続くのが、トルコ(約18万人)、イギリス(イングランドとウェールズのみの総数で、約8万5000人)、ポーランド(約7万1000人)、フランス(約6万7000人)という国々になっています。北欧に至っては、スウェーデンの5400人が最も多く、ノルウェー、デンマーク、フィンランドは総じて3000人台。57の国や地域の中で、ベルギーは16位にランクインしており、約1万2000人の受刑者がいます。
そのベルギーで世界初となる試みが始まりました。同国北部の町アントワープにある刑務所が、受刑者のインターネット使用を認め、全ての独房にモニターやマウス、ヘッドセットなどが設置されたのです。この刑務所は2年前に作られ、独房は刑務所というよりも、ビジネスホテルの一室のようにすら見えます。刑務所内でのインターネット使用は、「プリズン・クラウド」というシステムが用いられ、これにより閲覧できるサイトを制限し、受刑者のアクセス記録も管理します。受刑者には個別のUSBメモリーが支給され、個別のユーザーネームとパスワードも与えられます。 フェイスブックのようなSNSの使用は禁じられていますが、それ以外はほとんど制限もなく、独房からスカイプなどを使った家族や友人への通話も可能です。映画や音楽、ゲームのダウンロードも可能で、英BBCは先月、「一般の映画の場合は3ユーロで、ポルノ映画も6ユーロ程度で視聴可能です」という刑務所関係者のコメントを紹介しています。性犯罪者がポルノ映画をリクエストしても、殺人を犯した受刑者がバイオレンス映画をリクエストしても、基本的に刑務所サイドからストップをかけることはありません。