天理、窮地を救う文字は「越」 書のカード胸に 選抜高校野球
第93回選抜高校野球大会で、優勝した1997年の大会以来24年ぶりに準決勝(31日)に進出した天理(奈良)。選手たちがお守り代わりにユニホームにしのばせているものがある。今年のスローガン「越」の文字が入ったカードだ。試合中、ピンチに直面するとカードを出して、気持ちを落ち着かせるのが天理の伝統で、歴代選手らも何度も窮地を救われてきた。 25日の2回戦・健大高崎(群馬)戦でも29日の準々決勝・仙台育英(宮城)戦でも、ピンチでナインが集まったマウンドで達孝太投手(3年)らがカードを取り出し、反撃を切り抜けた。堀内太陽選手(同)は「お守り代わり。これがないと勝てない」と大切そうにカードを握りしめる。 カードを身につけるようになったのは2017年から。カードの文字は、同校の書道教員、大西卓也副部長(57)が心を込めて書いた。「弱小チームだった」という当時の選手らに気合を入れるため、練習場の一角に書を掲げることに。それを試合でも見られるよう、カードにしたことが始まりだ。 当時、書いたのは「底力」。「チームに一番足りないと思ったから」と大西副部長。書を掲げてからは、それを意識して練習に励むようになり、大会で結果を残せるように成長。言葉の力を実感し、その後、カードにした書を同年の夏の甲子園にも持参。大会中、ピンチのたびにカードを取り出し、27年ぶりの準決勝進出を成し遂げた。 今年も練習場には「越」「邁進(まいしん)」「真」の3枚の書を掲示。その中でカードに選んだのは、今年のスローガン「越」。新チームを結成するとき、昨年の先輩たちを越えるチームになろうと全員で決めた。内山陽斗主将(同)は「選抜の大会中止の際もくじけず、黙々と練習に専念していた先輩の姿に心をうたれた」といい、「その存在を越えれば、強くなれると確信した」と話す。 今大会でも、選手たちは試合前、必ずカードをユニホームのポケットに入れることを忘れない。成田侑介選手(同)は、「(昨秋の県大会の)智弁学園戦でも、カードのお陰でピンチをチャンスに変えられた」。長野陽人選手(同)も「苦しいときは(ポケットの)上から触ると力をもらえる」。選手たちは心強いお守りとともに、目の前の一戦を戦い抜くつもりだ。【広瀬晃子】 ◇決勝戦もライブ中継 公式サイト「センバツLIVE!」では、決勝もライブ中継します(https://mainichi.jp/koshien/senbatsu/2021)。また、「スポーツナビ」(https://baseball.yahoo.co.jp/senbatsu/)でも展開します。