次期戦闘機の第三国輸出解禁が必要な理由 議論が深まるAUKUSのあり方、日本も取り残されるな
2024年2月26日付の英フィナンシャル・タイムズ紙で、同紙コラムニストのギデオン・ラックマンが、米英豪による安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」の戦略的論拠は健全だが、技術的、政治的疑念が増大していると述べている。 AUKUSが太平洋全体に波紋を広げている。21年の三国協定により、豪州は米英からの原潜を取得する予定だ。 米国にとりAUKUSは、中国を封じ込める取り組みの中心的な要素となった。豪州にとっては、米国との軍事的な関係を強化する壮大な選択だった。英国にとっては、新たな世界的野心の象徴となった。 AUKUSは今後数十年に亘る戦略の核心になるだけに、議論は激しい。政府と二つの主要政党は協定を支持しているが、影響力のある二人の前首相キーティングとターンブルは厳しく批判している。 AUKUSに対する懸念は、戦略、政治、技術という三つの側面に分かれる。戦略的には、豪州が太平洋での米国の主導権に持続的に不可能な賭けをしたと批判されている。 政治的には、米国が依然として信頼できる同盟国であるかについて不安が増している。トランプ第二期政権になれば、米国がそのグローバルな戦略的な約束を維持するという前提に疑問符が付く。それでも、AUKUSは数十年に亘るプロジェクトであるため、約束は維持されねばならない。 技術的には、原潜の取得と維持には、豪州にとり非常に高価な技術的進歩が必要となる。AUKUSは、三つの複雑な段階で実施される。
まず豪州は現存の通常型潜水艦を改修する。次に、30年代初頭には米国から中古のバージニア級原潜を受け取る。10年後には、最初のAUKUS級潜水艦(英国で設計され、米国の技術を採用し、英国と豪州で建造される)が展開する。 豪州国防機関の中には、原潜AUKUSの建造で英国が大きな役割を果たすことに静かな失望がある。英国の軍事産業基盤に対する信頼は、米国程には高くない。 これらの疑念は、英空母に係る問題や最近のトライデント核ミサイルの試射失敗で更に高まった。米陸軍士官学校のエリザベス・ブキャナンは、「原潜AUKUSは恐らく実現しないだろう」と直截に言う。豪州の反対派は、長くて高額な道を国が進み始めていることを懸念する。 AUKUSに対する戦略的な反対論は最も弱い。豪州政府は、日印同様に、中国の軍事的、領土的野心に正当な懸念を抱いている。 中国が台湾を侵略するか、あるいは南シナ海での立場強化に成功した場合、中国がインド太平洋地域で支配的な力となり、豪州の安全に深刻な影響を与える可能性があることを理解している。AUKUSは、対中抑止力を強化する試みである。 AUKUSは、単に潜水艦だけでなく、高超音速、サイバー、人工知能等の分野で先進的な軍事技術を共有することを目的としている。軍事技術の進化につれて、AUKUSも進化できるだろう。 この協定は、最終的には決意と長期のコミットメントの表明である。これは、中ロが現行の国際秩序を転覆させようと協力しているという共通の認識に基づいている。かかる認識は、今まで以上に緊急かつ妥当だ。 * * *