鉄路の旅を楽しむレストラン「食堂車」の思い出~忘れられない海老フライの味
姿を消した食堂車
そんな食堂車にも時代の波が訪れる。地上の駅構内にあるレストランに比べれば、明らかに割高である。狭い厨房では、メニューの品数にも限りがあった。さらに、食堂車で働くスタッフの労働環境は厳しく、人手不足になっていった。次第に食堂車を備えた列車の数も減り始め、在来線のブルートレインでは1993年(平成5年)に、新幹線でも2000年(平成12年)に、食堂車は姿を消した。
車内販売も姿を消す
食堂車と同じように、列車内での飲食を支えてきたワゴン販売も、東海道新幹線が2023年(令和5年)10月にサービスを終了した。駅の売店やコンビニで、駅弁や飲み物を買ってから列車に乗り込む客が増えたことが大きな理由である。列車内で食事を楽しむという旅は、豪華な観光列車に委ねられるようになった。食堂車も姿を消して、車内販売も終了、旅は「移動する」という目的が全面に出てきて、時代に合わせてなのか合理的なものになりつつある。 建設中のリニア中央新幹線も、その大半はトンネルの中を走る。さらに移動時間は格段に短くなる。車窓の風景を楽しみながら、のんびりと食事を楽しむという"鉄路の旅"は、「食堂車」の姿と共に、すでに歴史の中のものになろうとしている。でも、あの海老フライの味だけは、"鉄道のレストラン"の特別な空気と共に、ずっと記憶に刻まれている懐かしい思い出である。 【東西南北論説風(477) by CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】 ※『北辻利寿のニッポン記憶遺産』 昭和、平成、令和と時代が移りゆく中で、姿を消したもの、数が少なくなったもの、形を変えたもの、でも、心に留めておきたいものを、独自の視点で「ニッポン記憶遺産」として紹介するコラムです。 CBCラジオ『多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N』内のコーナー(毎週水曜日)でもご紹介しています。
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