日本もワクチン開発を…米国で感染拡大するH5N1型「鳥インフルエンザ」に備えよ
デング熱、百日咳…まだまだある感染症
日本を始め国際社会の対応が必ずしも十分ではない状況下で、次のパンデミックは時間の問題との声が高まっている。 ブラジルを中心に急増しているのは、蚊を媒介とするデング熱だ。感染するとインフルエンザのような症状が出て、死に至る場合もある。 汎米保健機構によれば、4月17日までに報告されたデング熱の症例数は520万を超え、昨年の年間症例数(約457万件)を上回った。今年に入って死亡した患者はすでに合計1858人と、昨年の年間合計(2481人)を上回る勢いだ。 中国や欧州の一部では、咳やくしゃみなどの飛沫で感染する呼吸器疾患の百日咳が大流行している。 中国政府によれば、1月から2月にかけての感染者数は昨年の20倍以上(3万2380人)と急増し、少なくとも13人が死亡した。欧州ではオランダが深刻だ。4月第2週までに5303人が感染し、4人が死亡している(4月19日付Forbes)。
牛乳に鳥インフルウイルスの残骸
世界各地で感染症が蔓延している中、筆者は「最も危険なのはH5N1型の鳥インフルエンザなのではないか」と危惧している。 WHOによれば、鳥インフルエンザのヒトへの感染は2003年1月から今年3月28日までに合計888例、うち死亡は463例。ヒトからヒトへの感染は現時点では起きていないとされているが、油断は禁物だ。 鳥インフルエンザの世界的流行は2020年に欧州から始まり、米国にも飛び火した。その後に流行は沈静化したが、米国で再び感染が拡大している。 気になるのは乳牛にも感染が広がっていることだ。鶏は感染すると死に至る場合が多いが、乳牛は回復すると言われている。 米食品医薬品局(FDA)は4月25日「米国内で市販されている牛乳5本のサンプルのうち1本から鳥インフルエンザウイルスの残骸が検出された」と発表した。
ヒト用のワクチン開発を
乳牛からヒトへの感染も起きている。南部テキサス州では4月1日、陽性が疑われる乳牛から男性が鳥インフルエンザに感染し、結膜炎とみられる症状が出た(その後、回復)。 鳥インフルエンザウイルスは変異を続けており、ヒトからヒトに感染する新種が出現する確率が高まっていると言わざるを得ない。 「鳥インフルエンザのパンデミックが起きる」と断言するつもりはないが、備えあれば憂いなし。FDAは既にヒト用のワクチンを承認している(4月19日付Forbes)。 日本もヒト用のワクチン開発を直ちに開始するとともに、WHOを介して公平に世界へ配分できるメカニズムの構築に尽力すべきではないだろうか。 藤和彦 経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。 デイリー新潮編集部
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