「写真は言葉」ミスチル写真集も手がけた齋藤陽道さん 自身と同じ耳が聞こえない人の仕事ぶりの撮影・インタビューも
KKT熊本県民テレビ
熊本市現代美術館で「ライフ2」というさまざまアーティストたちの作品展が開かれています。社会の不条理や孤独などさまざまな矛盾と闘いながら未来に向かって作品を手がけるアーティストたちです。その一人、写真家の齋藤陽道さんは、日本を代表する若手写真家として期待される一方、移住した熊本の魅力を様々な形で発信するなど多彩な才能が注目されています。
熊本在住の写真家、齋藤陽道さんの作品「星の情景」。赤ちゃんの上に舞い降りる無数の星。…のように見えるのは、実はすべて「埃」です。
■齋藤陽道さん 「これが埃だったら埃。でも星だったらっていう想像、嘘を込めて、そういう状況も込めて撮ってみたら、とてもいいものが撮れました。今きれいだなと思っているのはつまらない。自分の想像を超えた世界を撮りたい」 齋藤さんは生まれつき耳に障害があります。ろう学校で手話に出会い、コミュニケーションを取ることの喜びを知りました。手話を写真で撮影したのがカメラを始めたきっかけでした。
2019年には写真界の芥川賞と呼ばれる木村伊兵衛写真賞の最終候補に残りました。Mr.Childrenなどの写真集を手がける一方、エッセイの出版や映画への出演など多彩な活動を続けています。 多忙な日々の中で齋藤さんが大事にしている仕事があります。「多様な職業に就いているろう者の存在をかつてのぼくが知ることができたなら、どれほど仕事に対するイメージが広がっただろう」。そんな思いで様々な分野で活躍する耳が聞こえない人の仕事ぶりを撮影し、インタビューを続けています。
■齋藤陽道さん 「(耳が聞こえないので)大人になってどんな仕事ができるのかって、夢もなかったです。仕事ができないっていう思い込みが多い中、いや、ああいうことや、こういうことができるじゃないって夢を広げてあげたい」
2020年、齋藤さんは家族で熊本に移住しました。阿蘇の草千里に惹かれたのが理由だといいます。「草千里ヶ浜」という作品に映る齋藤さんの子ども。障害はありませんが、家族は手話で会話しています。
■齋藤陽道さん 「手話は私の言語です。写真もそうですが、言葉ではない言葉。私にとって写真と手話は言葉そのものです」 齋藤さんが写真を通して伝えるのは「自分や目の前の人と“向き合う”」こと。 ■齋藤陽道さん 「目の前のひとりを大切にする。 あたりまえのことですよね。コミュニケーションができないのは大変なことです。 どうするのか、どうやるのかって、いつも考えています。コミュニケーションが取れないからもうやめる、ではなく、大変だけどどうするのか。そういう気持ちで写真を撮っています」 齋藤陽道さんなど10組のアーティストを紹介する「ライフ2」は、12月8日まで熊本市現代美術館で開かれています。