大藪春彦賞作家が新川帆立さんに銀座のバーを紹介…そこで名物ママが『元彼の遺言状』作者に放った「一刀両断の一言」【「鶯谷」第十八話#2】
※本作はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。 作家の赤松利市氏は、ベストセラー作家と知り合いだ。馴染みの銀座のバーの名物ママを紹介すると約束して……。前編記事【大藪春彦賞作家が通う銀座のバーの名物ママが直木賞作家に浴びせた「酷評」】より続く。 【写真】大胆な水着姿に全米騒然…トランプ前大統領の「娘の美貌」がヤバすぎる!
待ち切れない性格
翌日の午後6時過ぎ、私の携帯に着信があった。 発信者はママだった。 「はい、赤松です」 「今店に、赤松クンの紹介で来たっていう女の子が来ているんだけど、ちょっと待ってね」 会話を中断したママが、女の子に名前を確認している声が漏れ聞こえた。 「新川帆立って名乗っているけど、ほんとうに赤松クンの紹介なんだね」 「ええ、その人なら私の紹介みたいなものなんですけど、来週いっしょに行こうと……」 「だったらいいわよ。こっちでお相手するから」 それだけいって、通話を切られてしまった。 すぐに新川さんの携帯に電話した。 「あッ、赤松さんですか」 「来週お連れする約束じゃなかったけ?」 「もちろんです。でも待ち切れない性格なんですよね。ですから自分で探して来ちゃいました」 「だったら来週は……」 「もちろん来ますよ。今日の目的は、ママに私が書いた本をお渡しするだけですから」 事前に手渡しておけば、来週には講評が聞けるだろうと付け加えた。 新川さんからのショートメッセージに気付いたのは翌朝だった。 『ご紹介ありがとうございます。楽しく過ごせました。他のお客さんとの会話も弾み、結局閉店時間まで居座ってしまいました。来週のお約束ナルハヤで決めましょうね』 閉店時間まで? ママの店の開店時間は午後6時だ。 そして閉店は午後12時なのだ。 その6時間を新川さんがどのように「楽しく」過ごしたのか、まったく想像できない。
腑に落ちないことだらけ
ママの店を訪れる客は、ほとんどが常連さんだ。 年齢層もかなり高めだ。 しかも男性客が圧倒的に多い。 どう考えても、 「楽しく過ごせました」 「他のお客さんとの会話も弾み」 「閉店時間まで居座ってしまい」 どれもこれも腑に落ちないことだらけだ。 そういえば―― 思い出した。 山村正夫記念小説講座に講師として呼ばれ、そのうち上げの席で新川さんは冷たいお茶を飲んでいた。 アルコールが飲めないことを、他のメンバーから弄られていた。 お酒を呑めない新川さんが…… 「楽しく過ごせました」 「他のお客さんとの会話も弾み」 「閉店時間まで居座ってしまい」 ますます腑に落ちないことだらけだ。 堪らなくなった私は、モヤモヤだらけの頭で新川さんに電話し、翌週の待ち合わせ時間を決めたのであった。
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