佐久間宣行とガチ喧嘩? ゲストの本音が曝け出される爆笑問題のYouTubeに注目
いまやどの芸能人もYouTubeを始める時代だが、最もストロングスタイルのYouTubeを始めたお笑いコンビが爆笑問題だ。彼らがやるのは、もちろんゲーム実況や商品紹介ではない。チャンネル名は「爆笑問題のコント テレビの話」。その名のとおり毎週コントだけを投稿し続けている。 【写真】佐久間に不満をぶちまける太田「そういう態度がなんか気に入らねぇんだよな!」 いまでこそ「漫才」のイメージが強い彼らだが、爆笑問題の原点は「コント」。結成当初から地方民をネタにした「東京の不動産屋」、偏差値教育を皮肉った「進路指導室」など、ブラックなコントで人気を博していた。いまでは滅多に見ることができなくなった爆笑問題のコントをいつでも観ることあができる、ファンにとってこれほど嬉しいことはないだろう。 舞台は、大手テレビ局のワイドショーの制作をしている制作会社。太田光が演じる番組演出・大炎上馬鹿ノ助(だいえんじょうばかのすけ)と、田中裕二が演じる局のプロデューサー・片玉良夫(かたたまよしお)。そして、制作会社・河田制作の社長を演じているのは『ボキャブラ天国』(フジテレビ)からの旧知の仲でもあるBOOMER・河田キイチ。そして井口浩之(ウエストランド)、ダニエルズらタイタン所属の芸人たちと、本格的なコントを繰り広げる。 『テレビの話』の見どころはなんと言っても爆笑問題2人の演技だ。台本などいっさい無視するイメージがある太田だが、実は抑揚や間など、誰よりも繊細な演技を見せる芸人の一人でもあり、役に入り込んだときの上手さは「凄み」すら感じる。自由奔放なボケの中においても、大炎上馬鹿ノ助のエッセンスは損なうことなく、台本とアドリブを自由自在に行き来する。田中もドラマ『恋愛ニート~忘れた恋のはじめ方』(TBS)や映画『感染列島』などで、その安定感のある演技が高く評価されているが、この「テレビの話」でも、きっちりと片玉良夫を演じている。 また、このチャンネルの大きな魅力の一つが「豪華ゲストとのコラボ」だ。上田晋也(くりぃむしちゅー)、三村マサカズ(さまぁ~ず)、中川家、永野、久保田かずのぶ(とろサーモン)、鬼越トマホーク、ラランドなどの人気者たちが爆笑問題のためならば、と様々なキャラクターでコントに参加する。通常回も十分に面白いのだが、コラボ回の面白さはまさに圧倒的だ。コント中、太田はたびたび台本外のアドリブを入れ込むことでゲストの本音を引き出す。 特に評判なのが、『ゴッドタン』や『あちこちオードリー』(共にテレビ東京)などで知られるテレビプロデューサーの佐久間宣行をゲストに迎えた回だ。爆笑問題、特に太田光との因縁がある佐久間宣行との共演はファンの誰もが見たかった光景だった。(TBSラジオ『爆笑問題カーボーイ』で太田はたびたび佐久間への不満を口にしていた) 佐久間は飛ぶ鳥を落とす勢いの敏腕プロデューサー・後藤舌(ごとうたん)として登場。序盤こそ後藤(佐久間)がこれまで手掛けたテレビ番組を大炎上(太田)が元から考えていた、というコントの体裁を保っていたのだが、中盤から太田が大炎上の皮を脱ぎ捨て暴走を始める。 「うざいプロデューサーみたいなのが、こっち(手前)で見てていかにも俺は裏方だよみたいな顔してんだけど、ちゃんとカメラが俺越しに撮れよみたいな感じで、自分がここを仕切ってんだぞっていうのを視聴者に押し付けて、ああいうの嫌なんだよね! お前所詮裏方なんだから! しまいにはさ、オールナイトニッポンかなんか始めやがってさ、それで全部若手がやってんのは俺が仕込んだんだみたいなさ、そういう態度がなんか気に入らねぇんだよな!」と佐久間に対する不満をぶちまけると、後藤も「本当にお願いだから俺に関わるもの一切見ないでほしい、これだけはマジで! 本当にマジで! 太田さんは好きだけど、好きなままでいたいから本当に俺に関わるもの一切見ないでほしい! 俺に関わることを一切ラジオで言わないでほしい! これだけ言いにきた!」 「言っちゃうけど、俺達の年代40代以下、40代のディレクターからするとアンタ使いづらいタレントなんだよホント。めんどくせぇっていうか。50代のディレクターとかプロデューサーは太田さんと一緒にやって来られたから気概があるけど、俺達からしたら面倒くさいだけ。ちょっと言い過ぎて番組のスタッフも巻き込まれて、その割に堂々としてればいいのに、反省するでしょ? なんかへこむでしょ? それがカッコ悪いんだよな。(中略)お前と仕事したい若手なんかいねーぞ!」と反撃。これには流石の大炎上も「お前が使えよ!!!!!」と、本音を口にする。 このコントの枠を超えた「生身の殴り合い」こそ、爆笑問題の真骨頂。太田はひとたびスイッチが入れば誰とでも本音をぶつけ合うことができる。そしてその横でツッコむだけでなく、時に太田ですらドン引きするような「マジレス」をする田中。このいびつに見えて絶妙なコンビバランスこそ、爆笑問題が今でも活躍し続ける理由のひとつなのだろう。だからこそ、後輩たちも芸歴の垣根を超えて「先輩ですけどお前黙ってろ!」「お前めちゃくちゃつまんねえな!」などと容赦なく戦うことができるのだ。 鬼越トマホークがゲスト出演した回で、「こんな再生数低いYouTubeなのにこんなにスタッフいてどっから金を捻出してるですか?」「もうやめたほうがいいですよ、こんなコントやめましょう!」と毒舌を吐き、2人をたじろがせていた。たしかに、この回の再生回数は46万回にとどまっていたのに対し、逆に爆笑問題が鬼越トマホークのYouTubeチャンネルに出演し、4人でフリートークをした動画は180万もの数字を叩き出していた。コントではなく、2人がただ喋るだけのほうがチャンネルとしては伸びるのかもしれない。コントでもあり、フリートークでもある現在のこの形は、ゲストの本音が曝け出される最高の笑いであることはたしかだ。 そんな『爆笑問題のコント テレビの話』は、刺激的なお笑いが少なくなってきた昨今において、とても貴重なコンテンツだ。
かんそう