派閥資金問題で処分も遠い幕引き 苦境の首相、「解散」と政策に暗雲
「岸田1強」の見方も
一方で、首相主導の派閥解消と大量処分で安倍派は瓦解し、二階氏は次期衆院選不出馬に追い込まれた。「ポスト岸田」の有力候補も不在で、低支持率の中で党内ではむしろ「岸田1強」体制が進んだと見る向きもある。首相は支持率や党内情勢を踏まえ、今通常国会会期末の解散や解散先送りでの総裁再選の可能性を慎重に見極める考えだ。今後は「不人気の岸田首相の下での解散が得策」ともくろむ野党との攻防が激化しそうだ。 政権が「政治とカネ」問題の対応に追われ、国会審議の多くの時間を費やすことで、経済運営や緊迫化する国際情勢への対応など重要課題への影響が懸念されている。 首相は3月28日の会見で、株高や賃上げの動きを成果に挙げ、24年に物価上昇を上回る所得の実現や、25年以降に物価上昇を上回る賃上げを定着させるとして政策を総動員する意向を表明した。ある経済官庁幹部は「方向性はもちろん正しい」としたうえで政権の内情をこう明かす。 「首相官邸と自民党が派閥資金問題への対応で手いっぱいになり、今年に入って各省が所管する政策論議はほとんど進んでいない。安倍派幹部など多くの有力議員が影響力を失い、党内で物事をどう決めていくのか見通せず、新たな政策を打ち出しにくい状況だ」 政権基盤が揺らぎ重要な選挙が迫る中、国民に不人気な施策に真正面から取り組もうとしない首相への批判は根強い。児童手当などの財源として医療保険料に上乗せして徴収する予定の「子ども・子育て支援金」についても、政策の理念や必要性などを丁寧に説明し、国民負担への理解を求めるのが筋だが首相は「実質的な負担は生じない」との説明を繰り返すだけだ。公明党幹部は「かえって国民からの不信を招いている」と不満顔だ。 自民党の混迷で人口減や社会保障制度改革など重要課題への政権の対応速度は落ちている。財務省幹部は「衆院選の時期は見通せないが、来年の参院選で野党が勝利して衆参ねじれ状態になると政策は進まなくなる」と危惧している。
安藤 毅