「日本が北朝鮮と水面下で接触」の一報、「汚物風船」に悩まされる韓国にとっては進展してほしくない悪夢
6月13日午前、「日本と北朝鮮が5月にモンゴルで接触した」という韓国発の報道が出た。 【写真】南北休戦ラインに接する韓国・江華島の水田で見つかった北朝鮮の「汚物風船」。透明なビニール袋の中には大量のゴミなどが見える 韓国の代表的な中央紙『中央日報』は、複数の情報筋の話として、「両国が先月中旬、モンゴルのウランバートル近くで会ったと承知している」とし「北朝鮮では偵察総局・外貨稼ぎ関係者など3人が参加し、日本側からは有力な家門出身の政治家が代表団の一員として出てきた」と明らかにした。 事実なら「膠着状態に陥った」という日本メディアの報道とは異なり、現在も日朝間で水面下の交渉が活発に進行しているということになる。 ■ 北朝鮮外務省ではなく偵察総局が関わっている意味 中央日報の報道の要旨は「状況によっては、両国(日本と北朝鮮)間の議論が急進展する可能性も排除できない」ということだ。同紙は、北朝鮮側の出席者が外務省ではなく偵察総局だったという点に触れ、「金委員長が直接関わっているという意味とみられる」としている。 また、「日本政府が代表団に政治家を含めたのは、岸田首相と直接的な疎通が可能な代表が北朝鮮を相手にするという意味かもしれない。それだけ真剣に北朝鮮との対話に臨んでいるということだ」とも分析した。 両国首脳肝いりの接触ならば、急速な進展もありうる。
この報道に対し、日本政府は事実確認を拒否した。林芳正官房長官は記者ブリーフィングで関連質問が出ると「事柄の性質上、答えは差し控える」としながらも、「(日朝)首脳会談を実現するために総理直轄のハイレベル協議を推進する考えに変わりはない」と強調した。 韓国外交部も記者たちの関連質問に対して「確認できない」と答えた。ただ、「韓国政府は日本と北朝鮮間の接触を含め、北朝鮮の核問題、北朝鮮問題と関連して日本側と緊密に疎通している」とし、「日本と北朝鮮間の接触は北朝鮮の非核化と韓半島平和・安定に役立つ方向で行われなければならない」という立場を再度確認した。 通常、「事実確認拒否」とは消極的な肯定として受け入れられる。よって中央日報の記事は事実である可能性が高いというのが筆者の判断だ。 ■ 韓国は「蚊帳の外」だった可能性 これについて、知人の北朝鮮専門記者は次のように分析する。 「記事で引用された消息筋は(韓国)外交部などの情報当局だろう。情報当局が北朝鮮側のある種の動きを捉えられたが確信がない場合、いったんメディアに流して後続の動きを見守る場合がよくある」 つまり、「韓国政府が意図的に情報を流して事実かどうかを確認したのかもしれない」という見解で、「日朝接触について韓国政府は知らなかった」ということになるだろう。 これまで韓国外交部は「日朝交渉は韓国との事前調整が必要だ」という立場を堅持してきた。23年9月、日本の『朝日新聞』が、「北朝鮮と日本の関係者が日朝首脳会談開催のために今年(23年)春、2度にわたり東南アジアで秘密裏に接触した」と報道した当時、朴振(パク・ジン)外交部長官は国会で関連質問に対して次のように答えている。 「日本と北朝鮮が疎通し、外交的な対話を通じて韓半島の平和と安定に寄与できれば望ましいと思っている。ただ、その過程で(日本は)韓国とも緊密に疎通することが必要だ」