アマゾンの膨らむキャッシュ、株主還元に期待の声-株は最高値に接近
(ブルームバーグ): 米アマゾン・ドット・コムは長年、大手ハイテク企業の中で株主還元に最も消極的だった。現在、同社は多額のキャッシュを生み出しており、ウォール街ではもっと気前のいい還元を期待する声もある。
ブルームバーグがまとめたデータによると、アマゾンの昨年のフリーキャッシュフローは過去最高の320億ドル(約4兆8500億円)を記録したが、2024年はその2倍近くになると予測されている。大手ハイテク企業の買収が規制当局の反対に遭うことが多くなっているため、アマゾンはキャッシュの使い道の選択肢が少なくなっていると、ブルームバーグ・インテリジェンスのシニア・クレジット・アナリスト、ロバート・シフマン氏は指摘した。
シフマン氏は「これは自社株買いの増加だけでなく、配当を含むより積極的な資本還元政策を示唆している。還元が増えなければ、現金残高は年内に1000億ドルを超える可能性がある」と述べた。
アマゾンの2023年末の現金残高は860億ドル余り。
アマゾンは創業以来30年間、キャッシュを事業に投入してきた。最後の自社株買いは2022年の100億ドルで、同規模の同業他社と比べると微々たるものだ。
ブルームバーグがまとめたデータによると、アルファベットは23年に600億ドル余りの自社株を購入。フェイスブックの親会社であるメタ・プラットフォームズは同期間に200億ドル余りを自社株買いに費やし、2月には500億ドルの追加を表明するとともに、初の四半期配当を開始した。
対照的に、アマゾンは23年に自社株買いを実施していない。資本還元方針が変更されれば、21年に共同創業者のジェフ・ベゾス氏の後を継いだアンディ・ジャシー最高経営責任者(CEO)の下で同社が変化する兆しとなるだろう。
アマゾンの株価は大規模な自社株買いがない中でも堅調を維持してきた。アナリストが利益予想を引き上げ続け、人工知能(AI)がクラウドサービス部門アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)の成長を再活性化させるとの楽観的な見方が強まっているため、株価は年初から21%上昇、時価総額は1兆9000億ドル超に拡大した。ナスダック100指数は同期間に8%高にとどまっている。