西野ジャパンのベルギー封じ秘訣は「ミラーゲーム」にあり?!
ラウンド16のベルギー戦に向けて、日本代表の西野朗監督は「日本のストロング(ポイント)を出していきたい」と、アグレッシブに、攻撃的に戦うことを強調した。 しかし、相手は優勝を現実的な目標として掲げる「赤い悪魔」である。とりわけ攻撃陣は強力で、欧州の強豪クラブに所属するビッグネームばかりだ。その豪華攻撃陣をいかにして封じるか――。 それが、ポイントのひとつだろう。 ベルギーの基本システムは3-4-2-1。前線はロメル・ルカク(マンチェスター・U)を頂点に、その下にエデン・アザール(チェルシー)、ドリース・メルテンス(ナポリ)が控える1トップ2シャドー。右ウイングバックは超攻撃的サイドバックのトマ・ムニエ(パリ・サンジェルマン)。左ウイングバックはもともとウインガーのヤニック・カラスコ(大連一方)。攻撃時には3-4-2-1というより3-2-4-1に近くなり、5トップ気味になって攻めてくる。 日本の基本システムは4-2-3-1。ベルギーのウイングバックに日本の両サイドハーフが押し込まれれば、最終ラインは6人が並ぶことになる。これではボールを奪ったところで反撃に出るのは難しい。 では、6バックにならないためには、どうするか。 ヒントは一時期のJリーグで頻繁に見られていた、「あれ」である。 3-4-2-1の浦和レッズに対して対戦相手が同じ形にしてミスマッチをなくし、マークをはっきりさせて対応していた――。 そう、答えはミラーゲームである。日本も3-4-2-1で対抗するのだ。 ベルギーの1トップ2シャドーに対して日本の3バックが対応し、ベルギーのウイングバックのマークには、日本のウイングバックがあたる。ディフェンディングサードでは数的同数となるが、自分が誰を見るのか、こなすべきタスクははっきりとする。 3-4-2-1と言えば、5月30日のガーナ戦で試されたシステムである。西野監督は当時、3バックに関して「オプションとして持っておきたかった」と語っている。それ以来、懐にしまっていた3-4-2-1を今こそ、採用するときだろう。 GKは川島永嗣。3バックは吉田麻也、昌子源に、ボランチの長谷部誠を中央で起用するパターンと、吉田、昌子と槙野智章を左で起用するパターンがある。 ボランチは長谷部と柴崎岳。長谷部を最終ラインで起用するなら、柴崎のパートナーは山口蛍か。 左ウイングバックは長友佑都で決まりだ。一方、右ウイングバックは酒井宏樹か、原口元気かの選択となる。ただし、吉田、昌子とともに酒井を3バックの右で起用するという手もある。 1トップは大迫勇也だとして2シャドーは果たして誰か。ひとりは香川真司で異論ないだろう。もうひとりには乾貴士を起用して、「黄金コンビ」を復活させる。あるいは、思い切って本田圭佑を起用して、「ダブルエース」を並べてもいいだろう。 むろん、これまでどおり4-2-3-1で試合に入ってもいい。しかし、システムのかみ合わせが悪く、マークが曖昧になるのが見て取れたら、そのときは迷わず3-4-2-1へと変更したい。今大会の西野監督には、それを行うだけの決断力があるはずだ。 「赤い悪魔」封じの秘訣はミラーゲームにあり――。 一人ひとりが対面の相手選手を封じ込め、返す刀でコレクティブなカウンターを発動させる。それをゴールに結びつけたとき、夢のベスト8が見えてくる。 (文責・飯尾篤史/スポーツライター)