仲野太賀さんと阿部裕介さんが、上出遼平さんにモノ申す!? 『MIDNIGHT PIZZA CLUB』で好き勝手書かれた二人が「上出被害者の会」を発足!?
仲野太賀さん、上出遼平さん、阿部裕介さんの三人が、ネパールにある「世界一美しい谷」ランタン谷を目指す――。その度の模様を、阿部さんと仲野さんが撮影した100前を超える写真、上出さんの文章で楽しめる『MIDNIGHT PIZZA CLUB 1st BLAZE LANGTANG VALLEY』が、刊行即重版するなど大好評発売中! 【写真】超楽しそう…! 爆笑する仲野太賀さん 文章パートはあくまで上出さんの視点から語られる本書に、仲野さんと阿部さんは何やらモノ申したいことがあるようで――!? 三人を結び付けた伊賀大介さんをお相手に、二人が思いの丈を語ります。 写真:森 清 初出:「群像」2025年1月号(一部再編集しております。)
MPC被害者の会、発足!?
仲野:伊賀さん、今日はありがとうございます。 阿部:ありがとうございます。講談社から我々にも執筆の依頼があって、この本の中で上出(遼平)さんに我々の珍道中を延々とイジられまくっているので、もともとはそれに対して文章で反論しようと思ってたんですよ。 仲野:でも折角だったら二人で対談して、伊賀さんに土産話を聞いてもらう方がいろいろと話せるし、楽しいかなって。伊賀さんは我々のメンターですし。 阿部:相当作戦会議をしたんですけど、俺らを知ってるのは伊賀さんしかいないって。言うなればこれは、我らが被害者の会です(笑)。よろしくお願いします。 伊賀:声をかけてくれてありがとう。昨日原稿を読んだけど、もうめちゃくちゃに面白かったし、死ぬほど笑った! 阿部・仲野:ありがとうございます! 伊賀:最初、ニューヨークに太賀がアポ無しでやってきたところから始まるよね? いきなり引き込まれる構成が上手いなと思うし、これは文章で形になるまでには相当な時間がかかるだろうなーと。 仲野:本にするまでに上出さんの負担が大きすぎるっていうのはあるんだけど(笑)。でもめちゃくちゃ面白く書いてくれたから。 伊賀:本人も書いてて楽しかったんじゃない? 〆切あたり死にそうになってたけど(笑)。よそ行きの文章じゃないというか間違いなく旅行記ではあるんだけど、いつもの上出文体になっていてそこがまず面白い。その純粋な旅の楽しさの部分と、後半に書かれた地震で崩壊した村のおじいちゃんの家に行ったときの、あらがえない現実に対する切ない感情とかが共存しているところが、『ハイパーハードボイルドグルメリポート(以下、ハイパー)』でも描かれていた、ジャーナリスティックな面が出ていて。上出くんはいろんなところに行きたいって言うけど、阿部ちゃんは同じところに何回も行くっていう旅の定義が真逆なところも面白いよね(笑)。 仲野:定点観測の男(笑)。 阿部:俺は新しいところにたくさん行くというよりは、同じところに徹底的に通って、そこにいる人たちが変わっていく、成長していく様子などが撮れたらいいなと思ってやってるんで。 伊賀:しかし、三人のキャラクターの良いところ、愛すべきダメなところが出まくってるよね。 仲野:実はその部分が最初は不安で。僕は一応出役ではありますが、我々のことや阿部ちゃんのキャラクターがどこまで伝わるのかな、というのは気になっていたんですけど、上出さんが面白おかしく書いてくれて(笑)。 伊賀:二人は初めて原稿を読んだときはどうだったの? 最後まで完成してたのかな? 仲野:最初はニューヨークまでの序章部分をもらって。あぁ、これは面白くなりそうだなって。そこから数ヵ月後に全体があがってきました。 阿部:僕はロケ中に読んだんですけど、もう笑いが止まんなくなっちゃって(笑)。 仲野:でもどうなん(笑)? 自分があんな書かれ方してさ(笑)。「びっくりしたときにおしっこが出ちゃう犬」みたいな、「つまりは変態のような顔である」とか、すごい書かれ方してるじゃん。 阿部:でもそこは上出さんに任せていたので。原稿を確認して、僕は一個も訂正なしですよ。仕事のときも、その人に任せたらもう信用しているんで。間違いとかでなければ、訂正や修正はなるべくしないようにしています。でも最初は、自分ってこんなこと本当に言ってたんかなーとは思ったんですけど(笑)。 仲野:実際(笑)? 阿部:うん、実際。でも、俺だけがイジられてたら辛かったけど、太賀も一緒にがっつりイジられてたんで。 仲野:本当にがっつり。俺も嫌なイジられ方されてたなー。俺、もうパナソニックから絶対CMこないだろうなって。よくぞやってくれたなって。しかも事務所もOKって。本当にさ、どうなんそれって。 阿部・伊賀:(爆笑) 仲野:ちゃんと注意書きがあるし、フィクションの箇所ももちろんありますから。でもフィクションだとしても、やりすぎだろうって(笑)。それでいて俺がちょっとひっかかったのが、上出さんが常に、変人の阿部ちゃんとアホな俺と旅をして、「やれやれ」みたいな感じじゃないですか。それがちょっとどうなんって(笑)。あくまで僕はアカデミックです、っていう感じでさ! でも文章が面白いから、ぐうの音も出ないというか。悔しいなぁって(笑)。 伊賀:確かに、一番最初に上出くんの文章読んだときから思ったけど、文体が男前だし対象を客観視してるからなんかズルいよね(笑)。でも今回イジり倒してはいるんだけど、二人のことを下げてはないじゃん、ギリギリ(笑)。 仲野:下げてはない(笑)。ギリギリ。 伊賀:俺は三人を知ってるっていうのもあるけど、読者の人たちもこれを読めば一発で絶対三人のことが好きになると思うよ。よく映画でもあるじゃん、映画終わってんのに「アイツら元気かなー」みたいな、あの感じに近い(笑)。