基調物価2%へ上昇なら利上げ、25年度にかけ目標達成-日銀総裁
(ブルームバーグ): 日本銀行の植田和男総裁は23日、日銀が重視する基調的な物価上昇率が見通しに沿って上昇していけば、短期金利の引き上げによって金融緩和度合いを調整していく考えを改めて示した。参院財政金融委員会で答弁した。
総裁は基調的な物価上昇率について、現在は日銀の目標である2%を下回っているとし、先行き日銀の見通しに沿って2%へ上昇していけば「金融緩和の度合いを調整していく」と説明。その場合は「短期金利を引き上げていくことになる」と語った。
その上で、「物価・経済見通しやリスクが変化すれば、それも政策変更の理由になる」としたが、具体的なタイミングや利上げ幅については「予断を持っていない」と述べた。現在は基調的な物価上昇率が「2%を下回っているので、緩和的な金融環境を維持していくことが適切だ」との認識を示した。
日銀は3月の金融政策決定会合で、17年ぶりの利上げを決定したが、マイナス金利解除後も緩和的な金融環境が続くとしていることや、米国の利下げ観測の後退などを背景に、外国為替市場では円安が一段と進行している。市場の一部で追加利上げの前倒し観測も浮上しているが、25、26日の金融政策決定会合を前に総裁はこれまでの考えを改めて説明した形だ。
地政学リスク
2%の物価安定目標の達成時期については、現行の経済・物価情勢の展望(展望リポート)の見通し期間である「25年度にかけてと現状では判断している」と語った。日銀は3月会合で、2%物価目標の持続的・安定的な実現が見通せる状況に至ったと判断し、利上げを決めた。
緊迫化している中東情勢など地政学的なリスクが顕在化した場合には、金融市場の混乱であれば、流動性を機動的かつ柔軟に供給することによって「金融システムへの影響を極小化するようなオペレーションに努める」と指摘。経済・物価への対応では「基調的な物価上昇率にどのような影響を与えるかを丁寧に点検した上で対応を決める」と語った。