5度のがんを克服した男性にとって「高額な治療は不要」だった 自由診療クリニックで味わった「苦い経験」
このとき、治療内容も治療費の金額も、院長が患者の足元と懐具合を見て適当に決めていると確信し、そのクリニックでの治療はやめました。 あとで調べてみると、高濃度ビタミンC点滴は自由診療のクリニックの金儲けに使われる常套手段のようでした。高くつきましたが、いい勉強になりました。 ちなみに治療費についての参考として書きますが、私は脳腫瘍の治療では標準治療としてがんの三大治療を2か月で全て受け、全部が保険診療で、自己負担額は合計で十数万円でした。最先端の術中MRIを使った手術も含まれています。つまりこの手術も保険診療の範囲内です。だから健康保険と高額療養費制度の恩恵を受けることができて、自己負担額は予想を大幅に下回りました。会計のときに、漢方専門クリニックとは別の意味で「間違いではないか」と思ったほどです。
■「標準治療」こそが「最高」の治療 私は脳腫瘍以外の4つのがんも、全て手術、放射線治療、抗がん剤治療のいずれかもしくは組み合わせによる標準治療を受けています。がんを治すのに最も効果が高く副作用も少ないのが標準治療です。 世界中の病院で数多くの患者を対象とした臨床試験を通じて、その有効性と安全性が確認され、世界中の病院で提供されているのが「標準治療」です。 「標準」という名前を見ると、もっと「上級」の治療があるように感じるかもしれません。お金持ちやセレブだけが受けることのできる「上級治療」が秘密裏に提供されているのではないか、と。
でもそんなものは存在しません。実際は「標準治療」こそが世界で「最高」「最善」の治療です。がんを治すのに最も確実で安全な道なのです。 有名な話ですが、アップル創業者のスティーブ・ジョブズは膵臓がんが見つかったとき、病院での手術を拒絶し、代替療法(民間療法)に頼りました。しかし徐々に健康状態は悪化し、最終的には手術を受けることになります。本人はこの選択を後悔し、もっと早く手術を受けるべきだったと語っていたそうです。
病院での治療を拒絶しても、がんが消える秘策などどこにもありません。がんという現実、そして標準治療が最善の治療だという科学的事実をしっかり受け入れて、病院での治療に臨むことが大切だと思います。現実から目を逸らさずに、覚悟を決めて、標準治療でがんを治療していきましょう。
高山 知朗 :オーシャンブリッジ ファウンダー