【大麻取締法改正】犯罪抑止へ大きな一歩(12月30日)
大麻の使用を罰する麻薬取締法などの改正法が今月、施行された。県内で大麻を巡る犯罪集団の摘発が続く中、大きな後押しとなるに違いない。若年層への薬物汚染の広がりが、新たな非行や犯罪発生への懸念となっている。大麻の不正使用取り締まりの強化を、安全・安心な社会の実現に向けた大きなきっかけとして捉えるべきだ。 昨年の大麻事犯での摘発人数は全国で6703人と過去最高を記録した。10年前の1813人より4倍近く増えており、約7割を30歳未満が占める。さらに、10年前は80人だった20歳未満が1246人を数え、10年前の15倍と激増している。 県内では今年11月、郡山市を拠点にした組織的な大麻・密売グループが摘発された。捜査当局によると同グループは交流サイト(SNS)などでつながり離合集散を繰り返す反社会的勢力「匿名・流動型犯罪グループ(通称・トクリュウ)」として大麻に手を染めていたとされる。これまで、関係した男女8人が摘発されている。首都圏で強盗事件を繰り返している犯罪集団と同じような集団だ。摘発は一定の安心につながる。
大麻取締法はこれまで使用に関する罰則がなかった。背景には日本に「麻」を育てて使い、七味などで実を食す文化が根付いていたことがあるという。一方で、「外国では認められている」などの流言が使用を助長していたとの指摘もある。大麻はアヘンやコカインと同様、国連の条約で麻薬に定義付けられている紛れもない規制薬物だ。 今回の改正で大麻は「麻薬」として、使用を麻薬取締法で取り締まることになった。なお、従来の大麻取締法は「大麻の栽培の規制に関する法律」と名称を変え、医療分野での利用を可能とした。 米国の犯罪学者がかつて提唱した「割れ窓理論」のように、窓ガラスの小さなひび割れと同じく、小さな犯罪、ささいな非行を見逃せば、それが大きな災いとなって社会を崩壊させる可能性がある。安易に薬物に手を染めれば、取り返しのつかない事態が待ち受ける。今回の法改正に目を向けることが犯罪から社会を守る一つの契機になるよう願う。新年は善良に暮らす人が平穏に生活できる社会であってほしい。(関根英樹)