愛すべき奇妙な人々の聖地。『VIVA Strange Boutique』。
東京都内の駅名を「あ」から五十音順に選出し、その駅の気になる店やスポットなどをぶらりと周っていく連載企画「東京五十音散策」。「お」は奥沢へ。
周りを知る余地もない。好きな世界をひたすらに追及し、果てには店を構えた。なんてかっこいいんだ。そして自分は、いったい誰の目を気にして何に縛られているのだろうか……。強烈なポストパンクの香りと共に、ふやけたマインドに喝を入れられるここは、いろんな意味での聖地だと思った。 東京五十音散策 奥沢①
2019年4月にオープンした『VIVA Strange Boutique』は、1970年代後半から80年代前半のポストパンク、ニューウェイヴカルチャーを軸としたショップ兼アートギャラリー。店主の山口美波さんが敬愛するバンドとコラボしたオフィシャルなアイテムや、英国から買い付けたレコード、古本、ヴィンテージの缶バッジなどが並ぶ空間は宝の山。
セックス・ピストルズの解散と入れ替わるように、ジョイ・ディヴィジョンら気鋭のバンドが台頭し始めたのが1978年頃。パンクのDIYスピリットとエネルギーは継承しつつ、音楽的実験を重ねながら独自のスタイルをつくり、その”新しい波”がニューウェイヴやポスト・パンクと呼ばれている。ジョン・ライドンによるパブリック・イメージ・リミテッド、ポリス、ポップグループ、キュアー、ディーヴォ、トーキング・ヘッズ……といった数々のバンドが、多様で幅広い音楽ジャンルに接近しながら傑作を生み出していった。
サウス・ロンドンの輸入レコード店『ラフ・トレード』を営むジェフ・トラヴィスが、同名のレーベルを興したのも78年。レインコーツやモノクローム・セット、ザ・スミスといった新進気鋭のバンドを輩出した、今も第一線でシーンを牽引する伝説のレーベルだ。
店主の山口さんが学生時代に大きな影響を受けたと語るのが、この『ラフ・トレード』のコンピレーション・レコード。だからこそ、モノクローム・セットのデビューアルバム『Strange Boutique』から店名がとられているのか、と納得。お店は山口さんのポストパンク/ニューウェイヴ愛で貫かれている。