傑作アニメが大いに影響「超絶オシャレなキッチンカー」の代名詞的存在とは? 所有者“ならでは”の苦労も
「クレープ」の全国普及にも貢献
このように、『クリィミーマミ』はリアル志向が極めて強く、「優」の住む「くりみヶ丘」は国立市がモチーフとされ、ほかにも新宿や中野など80年代の東京の街並みが丁寧に描かれています。 そのため、劇中に登場するクルマやバイクは、メルセデス・ベンツW123型やBMW「3シリーズ(E21型)」をはじめ、ヤマハ「ボビィ80」、フォルクスワーゲン「ゴルフI」、ロールスロイス「ファントムVI」など、やはり80年代に日本で見られた車種が登場します。 じつは、『クリィミーマミ』でチーフディレクターを務めた小林 治さんは、アニメに実証主義を初めて取り入れたとされる『ルパン三世(Part1)』(1972年放送)に原画マンとして参加しています。おそらく、このときに演出を手掛けた大隅正秋(現おおすみ正秋)さんや作画監督の故・大塚康生さんから作品にリアリティを与える手法として実証主義を学んだのでしょう。 小林さんは、『クリィミーマミ』では仲間とともに設立したスタジオ「亜細亜堂」として参加(グロス請け)しており、チーフディレクターの立場から全編にわたって実証主義に基づいた絵作りを貫いていました。 そのような『クリィミーマミ』に登場するリアルなクルマの中でも、劇中でもっとも存在感を放っていたのが、「優」の両親が営むクレープ店のキッチンカーです。 モチーフとなったのは冒頭に記したようにシトロエン「Hタイプ」です。このクルマは1948年に販売を開始しましたが、当時としては画期的な前輪駆動方式であったことから、荷室の床は低く天井は高く、広大な荷室を誇る商用バンに仕上がっていました。 こうした先進的なプラットフォームを持っていたため、1981年まで33年にわたって製造され続け、その生産数は47万台あまりにも達します。なお、日本には1960年代後半と1970年代半ばの2回、正規輸入されているものの、車体サイズの割に割高だったからか、その販売数は最大でも200台程度にとどまるようです。