年末ボクシング6大世界戦。本当に見るべき試合はどれか?
ボクシングの魅力がKOにあるのならば、WBC世界ライトフライ級王者、拳四朗(26、BMB)の5度目の防衛戦となる同級7位、サウル・フアレス(28、メキシコ)との試合だろう。拳四朗のここ数試合の成長は目をみはるものがある。特に数種類、打ち分ける左のリードブローのスピード、角度、タイミングが磨かれ試合を支配する“キラーカード”になっている。いかにも小さいフアレス相手なら左で十分にコントロールできる。 「自分はもらわず当てる試合をしている。それをやり通して結果KOで勝つ。綺麗にしめくくれると思う」との拳四朗のコメントは言霊になるだろう。 フジの放映枠に入るかどうか微妙な立場に追い込まれているというが、実は、6試合で最もKO確率の高い試合が、この世界戦なのだ。また拳四朗は陣営の努力もあり、毎試合、記者会見や計量でメディアに話題を提供してくれる。サービス精神も旺盛。なかなか出来ることではない。こういうプロ意識も買いだ。 その拳四朗との統一戦構想もある元IBF世界ミニマム級王者、京口紘人(25、ワタナベ)のWBAスーパー世界ライトフライ級王者、ヘッキー・ブドラー(30、南アフリカ)への挑戦もKO決着の可能性がある試合。 ジムの先輩である田口良一から接戦の末、タイトルを奪いとったブドラーはパンチはないが、ガードを固め独特のリズムで上体をクネクネと動かしながら連打でプレッシャーをかけてくる。一発はないが、ボディ打ちも上手くペースを取られると手が止まらない。京口のキレとパワーで、そのいやらしさを撃退できるか、どうかだろう。“恩師”と慕う辰吉丈一郎譲りのボディアッパーを序盤に効かせておきたい。手数勝負に根負けして、下がるようならブドラーのポイントが積み重なっていくことになる。 最後になったが、マカオのトリプルに組み入れられたIBF世界フライ級王者、モルティ・ムザラネ(36、南アフリカ)に挑む同級14位、坂本真宏(27、六島)のタイトル戦も背景にドラマがある。坂本は大阪市立大の現役大学院生。文武両道を地でいくボクサーで、彼が世界のベルトを巻けば、その経歴がクローズアップされるだろう。当初、陣営は大阪市立大の体育館での世界戦を計画していたが、坂本は、WBOアジアパシフィックタイトルを保持していたが、東洋太平洋、日本タイトルを持っていなかったため世界戦乱発を避けるために作られたボクシング協会の内規に触れて国内開催ができなかった。普通なら、そこであきらめるが、枝川会長は「もう意地ですよ」と海外での世界戦実現にこぎつけた。 坂本のボクシングが世界王者レベルにあるか、どうかと聞かれれば疑問が残るが、当日のコンディションも含めて何が起こるかわからないのが、真剣勝負のボクシングの醍醐味。プロとは何かの定義からは逸脱するのかもしれないが、坂本の人生の歩み方においても意義のあるリングになる。 平成最後の年末決戦、6大世界戦の筆者予想は、日本人ボクサーの4勝2敗。ゴングはまもなく大田区総合体育館からーー (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)