入学式に手話通訳 学生2人も担当 九州大が初導入
4月3日に開かれた九州大(福岡市)の入学式で、初めて手話通訳がついた。「ろう者が手話で安心して暮らせる社会」を目指す福岡県手話言語条例が昨年4月に施行されたことを受け、九大が導入した。 (野津原広中) 【写真】両親に聴覚障害があり、大学生になって本格的に手話を学ぶ白水愛彩さん 手話通訳士1人に加え、障害者支援に取り組む学生2人も担当。会場前方のスクリーンや、誰でも視聴可能な動画配信でも、司会の言葉や学長のあいさつを手話で通訳する様子が流れた。入学式で学生が手話通訳をするのは全国的に珍しいという。九大の場合、従来は、話の内容を同時に文字起こしする字幕だけがあった。 九大は2017年、障害のある人を支援するアクセシビリティ・ピアサポーターを制度化。現在は2~4年の学生約30人が大学から委嘱されている。活動内容は、発達障害のある学生の支援▽大学構内のバリアフリーマップ作成▽聴覚障害のある高校生向けオープンキャンパスの開催▽手話講座受講-などがある。 入学式の手話通訳は、法学部4年の幸野(こうの)優希さん(21)と、同2年の白水愛彩さん(19)が務めた。サポーターになったきっかけを、幸野さんは「高校に通う電車で、手話で会話する女の子たちを見て『かっこいい』と思った」。両親に聴覚障害がある白水さんは「私の入学式の前に、父母への配慮を大学に頼んだ際に、字幕をつける活動があると知ったから」と語る。 2人は、約3週間前に台本をもらって手話の表現を確認。言葉と手話の速度が合うように、前日のリハーサルまで練習を重ねた。 本番後、幸野さんは「ほどよいスピードでできました」とひと安心。白水さんは「火災報知機が誤って鳴るアクシデントもありましたが、冷静にその事実を手話で伝えました」とほほ笑んだ。一緒に通訳を務め、2人の指導もしてきた手話通訳士の友池はすみさん(66)は「頑張りの成果が出て素晴らしかった。来年は学生さんだけでも通訳できるのではないでしょうか」と評価した。 九大インクルージョン支援推進室の下中村武・助教は「新入生や別室の保護者以外にも、動画配信を高校生など多くの人が見る。聴覚障害の人がいるという前提で準備することが大切だ」と説明する。 入学式の同時字幕は、サポーターの高畑夏希さん(経済学部4年)▽武末愛理さん(教育学部3年)▽野中莉央さん(同2年)▽福長奏(そら)さん(共創学部2年)-が担った。
西日本新聞