【大学野球】安田虎汰郎が斎藤佑樹以来17年ぶりの早大1年生春季リーグ初戦勝利投手 日大三エースが魔球炸裂
早大は立大に先勝。日大三のエースとして昨年のU18ワールドカップで日本代表に選ばれ、初の世界一に貢献した安田虎汰郎(1年)が同点の8回からリーグ戦初登板。早大では2007年の斎藤佑樹以来、17年ぶりとなる1年生の春季リーグ初戦勝利投手に輝いた。 ハートに火がついた。ブルペンで投球練習をしていた安田のもとに、先発投手の伊藤樹(3年=仙台育英)がやってきた。伊藤は直前に代打を出され、7回1失点でお役御免だった。「安田、思い切って行けよ!」。これでスイッチが入った。1-1の8回表、神宮のマウンドに駆けた。 先頭の1番、主将の田中祥都(4年=仙台育英)を四球で歩かせた。「緊張と、昂ぶりすぎて、空回りしちゃったというのもあります」。続く代打は高校日本代表でチームメートだった小林隼翔(1年=広陵)。犠打を決められ1死二塁とされた。 主将で捕手の印出太一(4年=中京大中京)は腹をくくった。「悔いの残らないボールを選択しようと。魔球を持っているんで」。安田は強い気持ちでチェンジアップを連投。3番を見逃し三振斬り。4番を二ゴロに仕留め、ピンチを脱出した。その裏、打線が奮起。競り合いの中で白星が飛び込んできた。初戦で勝利投手になった心境をこう語った。 「早稲田の投手として、神宮のマウンドに立てるということは、すごく幸せなこと。その喜びをかみ締めて、これからもマウンドで投げたいと思います」 昨夏、甲子園の大舞台でも躍動した。比較して、神宮はどうか。「全く別です。神宮も西東京大会からずっと経験してきましたが、大学野球の雰囲気はそれ以上に恐ろしいものがありました」。 恐ろしいもの-。 独特の表現に報道陣が食いつく。その真意を「高校野球だと、打順を見てもムラがあったりしますが、大学生はみんな体も大きいですし、応援の迫力もすごいので」と語った。時折、活きた言葉を放つところは、高校時代から変わらない。 日大三では練習試合も含めて、自らの投球成績を全て詳細に記録してきた。登板数はちょうど100試合。最後の投球は昨年9月9日、台北の天母野球場で行われたU18ワールドカップのスーパーラウンド・台湾戦だった。完全アウェーの中、5回から救援すると2イニングを投げ、4三振を奪い無失点。最後の打者を三振に仕留めたのも、魔球チェンジアップだった。 「きょうは勝利をつけていただきましたが、どんな場面でも、自分の仕事をしっかりするというつもりで、マウンドに立ちたいです」 新しい季節、新しい生活が始まった。まだ真っ白な安田虎汰郎の新しいノートには今後、どんな足跡が綴られるのだろうか。(編集委員・加藤 弘士) ◆安田 虎汰郎(やすだ・こたろう)2005年5月27日、千葉・鴨川市生まれ。18歳。小湊小2年で野球を始め、鴨川中では袖ケ浦リトルシニアに所属。日大三では2年秋からエース。3年夏の甲子園では1回戦の社戦で完封勝利。16強に進出。侍ジャパン高校日本代表に選出。好きな有名人は歌手の玉置浩二。特技は歴代内閣総理大臣の暗誦。好きな投手は小山正明、村山実、稲尾和久。176センチ、81キロ。右投右打。
報知新聞社