無印良品が閉鎖された小学校を素敵な宿泊施設にリノベーション 地域再生のホームベース、MUJIBASE OIKAWA
郷愁と共に土地の魅力への気づきをもたらす画期的なディスティネーション!
全国で生徒数減少による小学校の統廃合が相次ぐなか、無印良品が千葉県の養老渓谷にあった学校をリニューアル。 【写真5枚】懐かしい小学校が快適な宿泊施設に! 無印良品がリノベーションすると学校もこんなに素敵になる!! 遊休不動産の増加が止まらない。住み手がいなくなった民家の影響は限定的だが、閉鎖された商業・公共施設は美観や治安、そして何より利便性で地域に与えるダメージが大きい。「遊休」という緩やかな語感とは裏腹、動かない特性ゆえに、まさに負の遺産だ。 学校もそのひとつで、2000年以降の廃校数は8500を超える。少子化や過疎化が背景にあることを考えれば、日本社会の疲弊を象徴する事例といえるだろう。 閉鎖後の利用率は75%と高いものの、教育に特化した校舎のコンバージョンには多くのハードルがあり、結果的に場所も時間も限定された凡庸な再利用とならざるを得ない。 千葉県夷隅郡大喜多町、養老渓谷近くにあった老川小学校は、長きに亘って地域の教育を担ってきた。2000年にウッディなモダン建築へとリニューアルされたが、2013年に惜しまれながら閉鎖。だが、コンテンポラリーな空間設計と築年数の浅さが奏功し、この10月にMUJIBASE OIKAWAとして生まれ変わった。 ◆懐かしさ溢れる学校で新たな発見 ナチュラルかつ高感度な世界観で、日本のみならず海外でも支持を集める無印良品は、以前から商品展開だけでなく、住宅の販売やホテルのプロデュースなどを手掛けている。 MUJI BASEは、遊休不動産を地域体験が楽しめる空間にアップデートした宿泊施設という位置づけだ。過去に千葉県鴨川市と香川県の豊て島しまで古民家を再利用した実績がある。 3件目となるOIKAWAでは、小学校だった頃のインフラを生かし、宿泊客と地域の住民が交流できる拠点を目指した。教室は一棟貸しの客室や無印商品の売店、職員室はコワーキングスペース、中庭は誰もが利用できるイートインになった。養蜂の見学やファーム体験、地元の特産を使ったワークショップといったコト消費のイベントも定期開催されている。 使われなくなった遊休不動産には、使われていた頃の記憶が紐づけられている。特に学校は多感な時期の喜怒哀楽を喚起させるエモーショナルな存在。生産性という力学のみで消えていくのは惜しい。その意味でMUJI BASE OIKAWAは、郷愁と共に土地の魅力への気づきをもたらす画期的なディスティネーションだ。暮らすように過ごすリゾートとして、生まれ変わった“学び舎”を訪れてみたい。 文=酒向充英(KATANA) (ENGINE2025年1月号)
ENGINE編集部
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