キャビンアテンダントの自殺率は一般の1.5倍…米研究で明らかになった華やかな世界の裏側
疲労困憊の日々
乱れのない髪と完璧なメイクで魅惑的な目的地へ飛ぶ。そんな華やかなイメージの職業ではあるけれど、現実は全然違う。 寝不足は明らかな危険因子で、本当に笑えない問題。異なるタイムゾーンを行ったり来たりして、規定外の長時間労働を強いられる客室乗務員は、何年も何カ月も睡眠パターンが崩れたまま。睡眠衛生の基本を実践したり、自分のベッドで昼まで寝たりするチャンスなどないに等しい。 元客室乗務員で、現在は航空心理学者として航空会社にパイロットのメンタルヘルスや客室乗務員の人間関係、ピアサポートプログラムの導入についてのアドバイスをするカリーナ・エリクセン博士によると、寝不足には3種類ある。 「1つ目は概日リズムの乱れ。夜通しの仕事で体内時計が狂ってしまった状態です。2つ目はまったく眠れない日が2~3日続くことによる急性の寝不足です。3つ目は累積型の寝不足。時間と共に寝不足が少しずつ蓄積し、パフォーマンス、認知機能、感情処理能力、モチベーション、活力が低下します」。短距離フライトの客室乗務員でも、朝4時起きで夜11時帰宅というハードなスケジュールを強いられることがある。 この数年で、睡眠・覚醒サイクルの長期的な乱れと、うつ病などの気分障害の発症を関連付ける研究結果が増えてきた。「簡単に言えば、注意力が続かなくなり、ミスをしやすくなり、感情のコントロールが難しくなるということです」と説明するのは、英オックスフォード大学の医学助教授、アーティ・ジャナガス博士。 「概日リズムの長期的な乱れは、うつ病や不安障害といった多くの問題を引き起こします。また、もともと躁状態になりやすい人は、タイムゾーンをまたぐことでさらにリスクが高くなることも分かっています」。そのため英国の客室乗務員の労働時間は、EU乗務時間制限指令によって厳しく管理されている。 1回のシフトで労働時間が19時間に及ぶもこともあるけれど、厳格な乗務時間制限指令のもとでは労働時間が1週間で60時間、1年で2000時間を超えてはならない。このようなルールがあるにもかかわらず、欧州航空安全機関(EASA)は2019年2月、夜間および深夜終了のシフトにおけるパイロットと客室乗務員の疲労度が高くなることを見越し、さらなる疲労防止策の実施を推奨する報告書を発表した。