【注目校に聞く】聖光学院(上)「コロナ禍を乗り越えたプライドが〈東大合格100人〉の起爆力に」
聖光学院中学高校(横浜市)は“Be Gentlemen”(紳士たれ)を校訓に掲げ、カトリック的精神に基づく中高一貫の男子校です。神奈川県内はもとより、首都圏男子進学校のリーダー的存在として知られていますが、2024年の東京大合格者数が100人となり、耳目を集めました。その背景や、これから目指すところを、校長の工藤誠一先生に聞きました。
【話を聞いた人】聖光学院中学高校校長 工藤誠一さん
(くどう・せいいち) 1955年横浜市鶴見区生まれ。明治大学法学部卒、同大大学院政治経済学研究科博士前期課程単位取得修了。78年に母校である聖光学院中学校高等学校に奉職。事務長、教頭を経て2004年、校長就任、11年から理事長にも就任。さゆり幼稚園園長、静岡聖光学院理事長・校長を兼務。県私立中学高等学校協会、私学退職基金財団、県私立学校教育振興会、横浜YMCAの各理事長、日本私立中学高等学校連合会副会長などの要職を務める。16年、藍綬褒章を受章。
安心して勉強できることが大事
――今年の東京大合格者数100人は、大きなインパクトがありました。みんなで頑張ろうとか、東大でなくてはダメといった雰囲気があったのですか。 3桁の合格者数は全国で9校目だそうです。今春卒は61期生で、内訳は現役86人、浪人14人。合格率は全国でも高いはずです。今も昔も“予備校いらず”の聖光学院と言われます。高3生には夜の9時まで自習室を開放しているので、みんなが一緒に学ぶ環境にあると言えます。でも、「東京大でなければ」、ということはないですね。今の子たちは、チャレンジしたい気持ちはあっても、東京大さえ出れば幸せになれる、受験が人生を決めるなんて思っていませんよ。 ――コロナを挟んでの学園生活でした。 よかったのは、コロナの時に、他校に比べて早くからオンライン授業ができたことです。以前からChromebookを持たせて日常生活にも使っていたので、すぐに対応でき進度が遅れませんでした。でも、生徒はやりたくなければ早送りするし、寝ているし。オンラインだけではだめだなとわかったので、秋からテーマを決めて補習で中身を補いました。 コロナ流行中は密になってはいけないというので、学校を全部開放して勉強ができるところを増やし、食堂で夕食も出すことにしました。生徒が学校を信じて、安心して勉強ができることが大事ですから。 行事は、意地になって行いましたよ。今春の卒業生は中2でコロナ休校になった学年で、3学期の京都旅行は、次の年の春に、夏に……と延期して、高1の12月に実施、中3の1月のスキー教室も高1の1月にというように、時期を遅らせても体験させました。学園祭は、来場は保護者のみ。次は午前・午後5000人ずつの人数制限、次は制限なしというように年々緩和しながら対面での開催を維持。先生たちは旅行業者みたいになっていましたが、これだけ行事もできたんだから勉強もやれるという自己肯定感やプライドが生徒の内在的な起爆力を生んで、頑張り抜けたと思います。 行事開催は先生から不安視する声も出ました。保護者にしてみれば二度とない中高時代だから行事はやらせたい気持ちがあります。通り一遍の文面ではなく、チャレンジしたい、責任は私がとりますと、校長名でご家庭にメールを送りました。ワクチン接種も希望制で実施しましたよ。