人類の将来に影響するプラスチック汚染条約。生産制限、問題プラの禁止めぐり国際交渉が山場に
また、太平洋の小さな島国のように、莫大な量の海洋プラスチックごみが漂着し、被害を受けている国もある。 プラスチック汚染は今後、さらなる深刻化が予想されている。前出のエレン・マッカーサー財団の報告書によれば、2050年のプラスチック生産量は11億2400万トンと、2014年の2.6倍にも増大する。それに伴い、海中のプラスチックごみは魚の重量を上回ってしまうという。プラスチック生産で発生した二酸化炭素(CO2
)は地球温暖化の主要因にもなる。 WWFは、プラスチック生産の総量削減にとどまらず、問題のあるプラスチックの禁止または段階的な禁止も主張している。具体的には、製品の特徴に応じてプラスチックをいくつかのカテゴリーに分類し、ほかに代替の可能な使い捨てプラスチックなどについては即時に使用禁止するといった規制を世界レベルで設けるべきだとしている。 プラスチック汚染が深刻化する中、条約交渉は世界各国の市民の期待を背負ってスタートした。しかし、最大の焦点である生産制限導入の是非をめぐり、各国間で大きな対立が生じている。
ヨーロッパやアフリカ、ラテンアメリカの多くの国や島しょ国などが世界共通での生産制限の必要性を主張する一方、サウジアラビアなどの産油国や中国は生産制限の条項を盛り込むことに強く反対してきた。これまで日本は生産制限について、「世界一律ではなく、各国の事情を踏まえ、ほかの対策が効果を生じない場合に各国で検討すべき」というスタンスを取ってきた(下表)。 しかし、こうした日本政府の姿勢について、WWFジャパンの三沢氏は批判的だ。「世界共通の規制を設けなければ、たとえ条約ができたとしても各国がばらばらに対応する状況は変わらず、汚染がさらに拡大することになる」 (三沢氏)。
■日本は容器包装プラごみの大排出国 国連環境計画の報告書によれば、日本は容器包装プラスチックごみの1人当たり排出量では世界第2位の大量排出国だ(下図)。その点からも、プラスチックごみ問題で大きな責任を負っている。 その一方で、「プラスチックごみの多くを有効利用している日本は優等生だ」とプラスチック関連業界は主張している。一般社団法人プラスチック循環利用協会の2023年12月発行の報告書によれば、2022年の日本の廃プラスチック総排出量823万トンのうち有効利用できたものは717万トン、割合にして87%に達しているという。政府もこの見方を支持しており、日本はプラスチックごみの適正な管理ができているとの主張の論拠にしている。