侍ジャパン、プレミア12連覇のカギは積極打法 井端監督「やられる前にやる」
野球の国際大会、プレミア12で連覇を目指す日本代表「侍ジャパン」は、11月13日の1次リーグB組初戦でオーストラリアとぶつかる。日本は最初の試合で苦しむ傾向があり、井端弘和監督はかねて「初戦が非常に重要になる」と説いてきた。打開のカギは、積極的にバットを振ることにあるようだ。(時事通信運動部 安岡朋彦) 【写真】強化試合のチェコ戦で始球式を務めた荒木雅博さんと、捕手を務めた侍ジャパンの井端弘和監督 ◆苦しんだ初戦を糧に 黒星を喫した例こそ少ないが、近年の侍ジャパンは、優勝した大会でも初戦でスムーズに勝てたケースがほとんどない。世界一となった昨年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の1次ラウンド第1戦。大谷翔平(当時エンゼルス、現ドジャース)や村上宗隆(ヤクルト)、吉田正尚(レッドソックス)、岡本和真(巨人)を並べた強力打線が、中国を相手に三回まで1点しか奪えなかった。 金メダルを獲得した2021年の東京五輪はドミニカ共和国と顔を合わせ、九回まで1-3と2点を追う苦しい展開。19年のプレミア12では、ベネズエラに八回まで4-8と大きくリードを許した。 3試合とも最後は勝ったものの、井端監督は「五輪は負けていたら金メダルだったかどうか分からない。前回のプレミア12だって、負けていたらガタガタときたかもしれない。WBCのあのクラスの選手でも…。(国際大会の歴史を)さかのぼれば、初戦は苦戦している」と指摘する。だからこそ今回、豪州戦をしっかりと取りたいという思いが強い。 ◆「ファーストストライクから入る」 国際大会には、見ている側にも伝わるほどの独特の緊張感がある。さらに、プロ野球のレギュラーシーズンとは異なり、対戦経験のない相手と顔を合わせることが多くなる。 一般的に、初対戦は打者よりも投手の方が有利と言われる。しかも、日本のプロにはいないタイプの投手が登板することもあり、継投のタイミングも早い。簡単な打開策などないように思われるが、指導者としても選手としても国際大会の舞台を踏んできた井端監督は、こんな考えを持っている。 「やっぱり試合の入り。気持ちも、体も含めて、準備を怠らずに、第1球から、ファーストスイングから入っていく。(相手がどういう投手か)探らないで入ることは非常に大事。プロ野球なら(先発投手に対して)3打席くらい立てるが、国際試合で完投する投手はほぼいない。どんどん代わっていく。(打者が積極的にならないと)後手、後手、後手になってくる。言い方は悪いが、やられる前にやる」 初対戦であっても、見慣れないタイプの投手であっても、積極的にバットを振ることが重要だということだ。 ◆選手時代の「失敗」 過去には「失敗」があったという。井端監督が現役時代の代表歴といえば、37歳で出場した13年のWBCのイメージが強いが、若手の頃にも01年のワールドカップ、02年のインターコンチネンタルカップ、アテネ五輪の予選を兼ねた03年のアジア選手権と国際大会を経験してきた。 「最初はボールを見にいって失敗した。『知らない投手だから、ちょっと見させてもらおう』『追い込まれたらファウルで』と。だけど(初対戦だから)ウイニングショットは知らない。フォークだろうけど、落ち方を見たことない。それでは、なかなか結果が出なかった」 こうした経験から、国際大会は「第1球から、ファーストスイングから」という鉄則を身につけた。 ◆WBCでベストナイン 13年のWBCも、やはり初戦はブラジルを相手に7回まで2-3とリードされる苦しい展開だった。劣勢の八回1死二塁。5番稲葉篤紀の打席で「代打井端」が登場した。ファーストストライクを振り抜き、右前に同点適時打。逆転勝利を演出した。 日本は準決勝で敗れたが、井端は打率5割5分6厘をマーク。ヤディエル・モリーナ(プエルトリコ)やロビンソン・カノ(ドミニカ共和国)ら、そうそうたる顔ぶれと並び、指名打者部門でベストナインに選ばれた。 ◆浸透する井端イズム 今月9日と10日に行われたチェコとの強化試合では、侍ジャパンが序盤から意欲的にバットを振っていく場面が目立った。打線には小園海斗(広島)ら、井端監督の期待に応えられるような積極的な打者も多い。一回の見逃しストライクは第1戦(打者4人、2安打)がゼロ。第2戦(打者5人、1本塁打含む2安打1四球)も2球だけだった。 第1戦の試合後、井端監督は記者会見で「振っていかないと、なかなか(タイミングを)合わせることはできない。きょう、それができていた。プレミア12でも継続できればいいと思っている」と振り返った。井端イズムは浸透しているようだ。13日の初戦で実を結ぶか。