『おむすび』で6作目、“朝ドラ常連俳優”キムラ緑子に期待すること

　俳優たちはさまざまな制約の中で、特定のシーンを生み出さなければならない。限られた時間の中で、自身の演じるキャラクターの人生に、どれだけ真摯に向き合えるか。この深度によって、劇中で見せる表情は大きく変わってくる。キムラは自身が被災した経験がなく、本作の撮影現場で体感できる時間もほんの一瞬だったと語っている。けれども、阪神・淡路大震災における佐久間美佐江の感情や身体感覚を会得しようと必死になったことの結果は、当然ながら美佐江の“その後”にも生きてくる。彼女の人生はあの日から止まることなく、前に向かって進み続けているのだから。美佐江の明るい笑顔に“あの日のこと”を垣間見る機会はこれからもあるのだろう。そのたびに私たちは、キムラ緑子という俳優の生き方に触れることになるのだ。 　そんな彼女が朝ドラに登場するのは、『まんてん』（2002年度後期）、『純情きらり』（2006年度前期）、『ちりとてちん』（2007年度後期）、『ごちそうさん』（2013年度後期）、『半分、青い。』（2018年度前期）に続いてこれで6作目。『おむすび』に出演している俳優の中でも、最多数を誇るのではないだろうか。『半分、青い。』では麻生祐未、須藤理彩とともに、「100円ショップ」を経営する3姉妹を演じていたことが記憶に新しい。強烈なキャラクターだった。が、あれからもう早くも6年が経っている。美佐江もまた、それなりに視聴者にインパクトを与えるキャラクターだ。彼女の作り出す陽気なムードが、現在の「神戸編」に対する視聴者の印象に大きく影響していると思う。彼女こそ、さくら通り商店街の元気印。“キムラ緑子＝佐久間美佐江”が織り成すサイドストーリーにも注意を向けていきたい。