「反共主義」のためならナチスの残党も利用する…長らく"孤立主義"だったアメリカを大きく変えた「2つの脅威」
■人種差別を改善させていった「本当の意図」 アメリカ南部は保守的な気質から黒人差別の根強い地域でもあるが、意外にもトルーマン大統領は、1948年の選挙で軍内の人種差別を改善するなど、黒人の市民権向上を唱えている。じつは、これも反共主義への支持を得るためだった。 当時、1946年7月にフィリピンがアメリカから独立し、翌年8月にはインドがイギリスから独立するなど、アジアやアフリカでは民族自決権に基づく独立運動が進みつつあった。そのなかには、欧米大国による植民地帝国主義への反発から共産主義が台頭した地域もあり、ベトナムでは1945年9月にインドシナ共産党を率いるホー・チ・ミンがベトナム民主共和国の独立を宣言し、これを認めないフランスと敵対した。アメリカ国内での人種差別の改善には、有色人種の国家を味方に引き込む意図があった。 ---------- 佐藤 優(さとう・まさる) 作家・元外務省主任分析官 1960年、東京都生まれ。85年同志社大学大学院神学研究科修了。2005年に発表した『国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて』(新潮社)で第59回毎日出版文化賞特別賞受賞。『自壊する帝国』(新潮社)で新潮ドキュメント賞、大宅壮一ノンフィクション賞受賞。『獄中記』(岩波書店)、『交渉術』(文藝春秋)など著書多数。 ----------
作家・元外務省主任分析官 佐藤 優