年賀状離れ加速 はがき代値上げが拍車 福島県内企業、経費を懸念 「日本の文化」根強い支持も
郵便料金の値上がり後初めての年末が近づき、福島県内の企業では取引先関係者に送る年賀状を減らす動きが出ている。資材・原材料費の高止まりを踏まえ「経費削減のために」との声があり、デジタル化の進展などにはがき代値上げが拍車をかけた格好だ。一方で、友人らに長年年賀状を送ってきた人たちには「伝統文化を大切にしたい」との思いから、根強い支持もある。 「年賀状によるご挨拶(あいさつ)を控えさせていただくことといたしました」。会津地方のある建設業者は来年分から送付をやめる。取引先には11月に廃止を伝えるはがきを出した。毎年、取引先や顧客らに約千通を用意してきた。10月にはがき代が1枚63円から85円に値上がりし、年賀状経費は約2万円増える見通しとなり、次の年以降の負担も考え、決断した。担当者は「できる限り年賀状であいさつしたいが、経費を少しでも削りたい」と打ち明ける。顧客には年末のカレンダー配布、取引先には新年会などを通じ、これまで同様の関係づくりを進める。
アプリケーションソフトの開発などを手がける、いわき市のバックス情報システムも、はがき代の値上げなどを受け、来年分の送付を取りやめる。社長の鈴木雅之さん(62)は環境への配慮やデジタル化など時代の流れも踏まえたと打ち明ける。ただ、年賀状による新年のあいさつを「日本ならではの文化」と大切に考えてきた。今年初めに受け取ったはがきを見返しながら「個人同士のつながりを保ったり、日頃の感謝を伝えたりするのには必要」と話す。個人としては200枚程度出す予定だ。 これまで通り、年賀状の送付を続ける企業も。郡山市の石井電算印刷社長の石井祐一さん(60)は、市内の取引先などに例年400~500枚出しており、来年分も同規模で準備している。近年は企業や病院、個人から約200件の年賀状印刷を受注しているが、ピーク時より100件以上減少。2年ほど前からは「今年で最後にします」などの文言入りを希望する注文が増えてきたといい、寂しさを感じている。