人口減少と空き家増加の課題、住まいに困っている人と空き家のマッチングで活路。高齢者や低所得者などの入居サポート、入居後の生活支援も 福岡県大牟田市
そこで牧嶋さんたちは300人の民生委員(※)に協力を求めることを思いつきました。ところが、当初は相談しても「厚生労働大臣から委嘱され活動している民生委員は、自治体職員の下請けではない」「なぜ私たちがやらなくてはならないのか」と反対意見も多かったのだとか。 「日ごろから築いてきた人間関係を武器に『空き家利活用は地域の問題でもある』ということを何度も説明し、最終的には24校区の内、23校区に協力してもらうことができました。地域で支える認知症の取り組みなど、長期にわたる行政と民間(民生委員)の協働という土壌があったからできたのだと思います」(牧嶋さん) ※民生委員/厚生労働大臣から委嘱された非常勤の地方公務員で、地域住民の立場から生活や福祉全般に関する相談・援助活動を行う。地域社会のつながりが薄くなっている現在、子育てや介護の悩みを抱える人や、障害のある方・高齢者などが孤立し、必要な支援を受けられないケースがある中、身近な相談相手となって、支援を必要とする住民と行政や専門機関をつなぐパイプ役を務めている さらには、市内の高等専門学校の建築学科の先生に相談し、学生たちに空き家の老朽度調査を実施してもらえないかを相談。結果、かかった費用は民生委員に渡した蛍光ペン代と学生たちのアルバイト代を合わせて、約90万円でした。
空き家と、住まいに困っている人たちをつなぐ仕組み
この調査で得られた情報をもとに、牧嶋さんたちは本格的な空き家を利活用した居住支援に踏み出します。 2014年には、住宅確保要配慮者向けWEB情報システム「住みよかネット」を立ち上げました。入居を希望する人と空き家のオーナーをマッチングするだけではなく、入居してからの暮らしも見据えた「居住支援」の相談窓口へとつなげるものです。
大牟田市の居住支援では、住宅の確保から入居支援まで、大牟田市居住支援協議会が窓口となりつつ、入居後の生活支援に関しては居住支援法人であるNPO法人大牟田ライフサポートセンターなどの支援団体が主となって支援していく体制をとっています。ここまでが住宅施策、と区切ってしまうのではなく、互いに連携をとり、必要なところを補い合いながら業務を分担しているところが特徴的でしょう。 「私たち大牟田市居住支援協議会は、空き家所有者と入居希望者を結びつける『仲人』です。オーナーに行政や福祉の窓口に相談にきた相談者の人となりを紹介しながら、現場でお見合いをしてもらいます。この、第三者が間に入るトライアングルの関係と運用の仕組みづくりが重要なんです」(牧嶋さん) 入居後も支援団体が間に入ることで、オーナーが直接対峙するのを避け、入居者に起こっている問題解決のための相談に乗ることができるわけです。
【関連記事】
- 高齢者、障がい者、外国人など、住まいの配慮が必要な人たちへの支援の最新事情をレポート。居住支援の輪広げるイベント「100mo!(ひゃくも)」開催
- 「生まれ育った街だから住まいに困る人を減らしたい」。外国籍、高齢者などに寄り添い住まいと福祉を結ぶ居住支援法人・上原不動産
- ”養育費未払い”に苦しむひとり親家庭の入居困難。”養育費保証”の家賃保証会社がサポート Casa
- ”障がい者も入居可”ではなく”入居したい”部屋の選択肢を。賃貸の負に挑む小さな不動産屋さん エステートイノウエ・岡山県倉敷市
- 高齢化率30%の北九州市が居住支援のフロントランナーに。官民連携の理想モデルが全国で話題 市&NPO抱樸インタビュー