沖縄の「エナジック」、創部3年目で甲子園初出場なるか? 超高校級の“強肩捕手”は「甲斐2世」の呼び声も
夏の甲子園を目指して、高校野球の地方大会で熱戦が続いている。なかでも、7月20日に準決勝が行われる予定の沖縄大会に熱い視線が注がれている。ベスト4に進出したチームは、興南とKBC未来沖縄、ウェルネス沖縄、エナジック。興南を除く3校は、どこが優勝しても春夏通じて甲子園初出場となる“新興勢力”だ。このなかで、最も歴史が浅いのは、エナジックである。【西尾典文/野球ライター】 【写真を見る】ポジションはキャッチャー スカウトも注目する龍山暖選手 ***
スカウトも注目する強肩キャッチャー
エナジックスポーツ高等学院は、2021年4月、野球とゴルフのトップアスリート養成を目的に開校した。野球部は翌22年に創部された。つまり、今の3年生は“1期生”にあたる。チームを率いる神谷嘉宗監督は、浦添商や美里工などで甲子園に出場経験がある指導者だ。神谷監督のもとに、実力派の選手たちが集まってきた。 創部1年目には、早くも秋の沖縄大会でベスト8に進出。今春の県大会では決勝で興南を2対0で破り優勝を果たした。その勢いは夏の大会でも衰えることなく、3回戦で強豪・沖縄尚学を相手に、7対0(7回コールド)で勝ちを収めた。 チームを牽引するのが、プロ球団から高い注目を集めている、キャッチャーの龍山暖だ。入学直後から正捕手に定着している龍山の魅力は、“強肩”である。筆者が初めて彼のプレーを見たのは、今年4月に行われた春の九州大会、対明豊戦だった。シートノックの“ボール回し”の段階から、一人だけボールの勢いが飛びぬけており、非常に驚いた。
驚異の「セカンド送球タイム」に筆者も舌を巻いた
視察に訪れていたスカウト陣のひとりは、龍山について、以下のように語る。 「肩の強さは、(高校ナンバーワン捕手の呼び声が高い)健大高崎の箱山遥人より上ですね。今年の高校生の中で見ると、全国でトップかもしれません。セカンドベースの近くでもボールの勢いが落ちない。“本物の強肩”だと思います。身長は大きくありませんが、体つきはしっかりしています(身長172cm、体重76kg)。バッティングではパンチ力もありますね。キャッチャーに大事な集中力や洞察力には足りない部分がありますけど、基本的な能力は高いので、しっかり鍛えればいいキャッチャーになるかもしれません」(九州地区担当スカウト) 捕手の実力を確かめるうえで、重要な指標のひとつに、イニング間の「セカンド送球タイム」がある。2.00秒を切れば“強肩”と言われるが、筆者が明豊戦で龍山のタイムを計測したところ、最速で1.80秒をマークした。 このタイムは、現地で視察した大学生や社会人、独立リーグを含む約200試合に出場した捕手のなかで、トップの数字だった。将来的には、ソフトバンク・甲斐拓也のような日本を代表する強肩捕手に成長することが期待できる素材だといえる。プロ志望届を提出すれば、10月のドラフト会議で名前を呼ばれる可能性も高い。