<近江式エンジョイベースボール>24センバツ/2 やる気を引き出す「活」 自立心高め、意識に変化 /滋賀
昨夏の甲子園初戦で姿を消した近江。1年生ながら甲子園の土を踏んだ選手、グラウンドには立ったが活躍できなかった選手、メンバーに選ばれず悔しさをかみ締めながらアルプススタンドでの応援に声をからした選手、それぞれが「甲子園」への熱い思いを胸に、敗戦の翌日からセンバツを目指して新チームが始動した。 【写真で見る歓喜の瞬間】歴代のセンバツ覇者たち 直後の昨年8月10日、多賀章仁監督はグラウンドのブルペン前に選手らを集め、「お前たちには夏の県大会6連覇というプレッシャーがある。まず秋の県大会で勝って近畿大会でも優勝し、センバツに出るぞ」と活を入れた。 多賀監督は選手たちに示した「エンジョイベースボール」を実現するために、まずは練習よりも重要だと考える「精神的自立」を意識させようと、ロッカーをはじめ道具などを入れるボックスの掃除や整理整頓に力を入れるよう伝えた。選手らも多賀監督の思いに応え、自らを律していった。そして日々の練習に汗を流した。 一方でその頃、部をまとめる主将や副主将、各ポジションのリーダーで構成する2年生の幹部は新チームをどのようにまとめればいいのか悩んでいた。「今の2年生は前に出て引っ張っていくタイプがいない。だから全員で新チームを作っていかないといけない」という思いがあった。幹部ではなかった森島海良(2年)らも「自分たちも1年生を引っ張っていこう」と協力し、徐々に2年生の団結は強くなっていった。 ところが、県大会開幕まで3週間となった頃、チームの雰囲気が緩み始め、声が出ていない1年生の選手や練習中にけがをする選手が増えた。 「このままではやばいんちゃうか」。ある日の練習が終わると2年生全員でベンチに集まり、チームを立て直すにはどうすればよいのか解決策を出し合った。「自分たちはベストを尽くしたり、仲間に気配りしたりできているだろうか」。自問しながら1週間ほどミーティングを続け、「自分たち自身も甘くなっている部分がある。なれ合いの気持ちを捨て、チーム全員が厳しい気持ちを持って練習に臨もう」と結論を出した。 県大会開幕の約1週間前。2年生のミーティングで出た意見を基に、1年生に集まってもらい「もう一回それぞれの行動を見直そう。悪かった部分は修正していこう」と呼び掛けた。ミーティングは緊張した雰囲気になったが、1年生は真剣な様子でその言葉を受け止めた。この日以降、選手らの行動が早くなり、あいさつなどの基本動作も改善されていった。チーム全体としてもオンとオフの切り替えもできるようになり始めた。 互いの意識を高め合い気持ちを一つにした選手たちは、秋の戦いに向けて進み始めた。【菊池真由】