「氷砂糖か覚醒剤か」紀州のドン・ファン事件は売人2人の証言で無罪に…検察が図る「逆転の一手」
「紀州のドン・ファン」こと野崎幸助氏が’18年に自宅で死亡していた事件で、12月12日に和歌山地裁は殺人罪で起訴された妻の須藤早貴被告に無罪判決を言い渡した。また覚醒剤取締法違反の罪で起訴されていた件も無罪となった。 【写真】早貴被告が”紀州のドンファン”葬儀でみせた「驚きの表情」 野崎さんが大量の覚醒剤を摂取して死亡したことは事実だ。しかしこの覚醒剤を誰がどうやって飲ませたのか、もしくは野崎さんが量を誤って致死量を摂取したのか、これらの真相は分からぬままだ。疑わしきは罰せずの原則で“無罪”となったのだ。 ◆自分が用意した氷砂糖を砕いたもの 須藤被告が覚醒剤を購入しようとして売人と接触し購入したことは分かっている。しかし検察側が証人として呼んだ売人Aと売人Bの2人の証言が食い違ったのだ。 須藤被告に覚醒剤を渡したのは売人Aだ。Aは 「本物の覚醒剤を渡した」 と証言している。しかしAが渡した覚醒剤を用意したのが売人B。インターネット掲示板に“覚醒剤を売る”という内容を隠語で投稿したのも売人Bだ。この2人は“売人仲間”といえる。 しかしBが 「自分には覚醒剤の入手ルートはなくAと一緒に覚醒剤として売っていたのはすべて自分が用意した氷砂糖を砕いたものだ」 と証言したのだ。Aは 「覚醒剤と氷砂糖は、結晶の状態であれば割れ方の特徴から容易に識別できる」 と話しているが、実際に須藤被告に手渡すとき、“車から降りて暗い路上で携帯電話の明かりで照らして見た”と述べており、その視認状況から“確実に覚醒剤と識別できたか疑問が残る”と裁判所は判断した。 すなわち須藤被告が“本物の覚醒剤を入手したとまでは認められない”とした。 「野崎さんが亡くなった原因は覚醒剤。検視結果からこの事実は揺るがない。しかし須藤被告が覚醒剤を入手したと言えないという大前提が覆される結果となり“凶器”ともいえるものが宙に浮いた。すなわち須藤被告は“覚醒剤で無罪”=“殺人罪も無罪”となったのです。 そもそも直接的な証拠はなく、“完全犯罪”などの検索履歴や事件当日だけ不自然に2階に上がる回数が多かったことがヘルスケアアプリの記録に残っていた点など状況証拠しかなかった。法廷内で無罪判決が出た瞬間、報道陣だけでなく検察側も唖然とし、絶句していました」(テレビ局関係者) 野崎さんは須藤被告と結婚して以降もC子という女性と性的関係を持っていた。 ◆検察はおそらく控訴する C子は野崎さんから電話があり 「覚醒剤やってるで、へへへ」 と言われ 「頭おかしいんじゃないの」 と返したことがあるという。 野崎さんが亡くなったのは’18年5月24日だが、C子がこの電話を受けたのが4月末だったという。この発言もあることから一概に冗談だと決めつけることはできないと判断された。 今後の展開はどうなるのだろうか……。刑事事件に詳しい『森實法律事務所』森實健太弁護士によれば、 「統計等をみると、昨年の地裁での無罪の割合は0.2%なので珍しい部類に入る。検察はおそらく控訴する可能性が高いです。控訴審は第一審とは異なり裁判員裁判ではないですし、現に控訴審で判断が異なる結論を出した事件もあります。 しかし控訴審までに被告人が被害者を殺害したことを直接裏付ける証拠を準備するということは難しいでしょう。そのため、検察側としても新しい証拠の提出をして責めるというよりは、第一審の判断がいかに誤っているかということを主とした主張をして責めると思われます」 と分析する。 須藤被告が逮捕されて3年。検察はどんな手を打つのだろうか――。
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