英国で外国人労働者の搾取が横行 EU離脱後の移民制度改正のため
労働者搾取の撲滅に取り組む英国の慈善団体FLEXは、欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)後、英国で接客業や介護業、農業に携わる外国人労働者の労働環境が悪化していると報告した。 EUからの離脱により、英国では多くの業界が労働者の確保に苦慮している。労働者不足が特に顕著なのは、農業、接客業、介護業だ。これらの業種は雇用の安定性が低く、低賃金や長時間労働など労働条件が劣悪であることが多い。英国民はこうした労働環境を避ける傾向にあるため、雇用主は外国人労働者に頼らざるを得ない。英国がEUに加盟していた間は、他の加盟国の労働者が簡単に入国し就労することができたため、これらの業界もうまく回っていた。だが、2020年初めに英国がEUから離脱すると状況は一変した。 これまでの保守党政権は、英国のEU離脱を見越して移民規則を変更し、予想される労働力不足を緩和しようとした。新制度は低賃金で働く労働者ではなく、専門的な資格を持つ人々、つまり「高技能」移民を奨励したいという英政府の意向を反映している。政府はまた、労働力が不足している職種の一覧を拡大し、それらの職種に携わる外国人労働者の受け入れを簡素化したほか、臨時季節労働者向けのビザ(査証)も導入した。ところが政府はその後、移民の増加を懸念し、就労ビザ取得に必要な最低賃金を大幅に引き上げるなど、制度にさまざまな制限を加えた。 就労ビザの取得手続きには、労働者と雇用者の双方にさまざまな費用がかかり、数千ポンドに上ることもある。例えば、労働移民は通常、最初のビザ申請料金に加え、毎年1000ポンド(約20万円)を国民医療制度(NHS)に支払わなければならない。一方の雇用主は、外国人労働者を雇うためのスポンサーライセンスを購入し、雇用する外国人労働者1人につき年間1000ポンド以上の追加料金などを支払う必要がある。雇用主はまた、外国人労働者の法的な支援や研修など、その他の費用も考慮しなければならない。 就労ビザの申請手続きには、数多くの事務的な壁もある。また、就労ビザには通常、制限的な条件が付いている。外国人労働者は雇用主を変えることが難しく、突然解雇されるなどして経済的に困窮した場合でも、国の社会福祉制度に頼ることはできない。そのため、外国人労働者の多くは雇用主に縛られ、英国に滞在する資格や生活状態を雇用主に依存することになる。 こうした費用や制限、煩雑な事務作業は、多くの労働者や雇用主にとって大きな負担となっている。FLEXの報告書は、農業、介護業、接客業といった、英国人が避ける傾向にある業種は特に脆弱(ぜいじゃく)だと指摘する。これらの業界の関係筋は同団体に対し、将来の展望や提供できるサービスの質について「深刻な懸念」を抱いていると語った。