高齢化で医師不足、小児医療維持に米沢市が腐心 市立病院初診時の利用者負担軽減 医院開業も手厚く支援
山形県米沢市が小児医療体制の維持に腐心している。小児科の開業医が少ない上に高齢化が進み、近い将来不足する恐れがある。市立病院を初診で利用する際の負担軽減や、開業促進策を打ち出し、地域の子どもたちが医療を受けやすい環境の確保に全力を挙げる。 同市によると、市の人口約7万7000人(9月時点)に対し、小児科の開業医は市内に4病院しかない。いずれも医師の高齢化が進み、一つは年末限りで閉院を予定する。予防接種や検診なども重なって受診の予約枠がすぐ埋まり「予約の電話が通じにくい」「市外の医療機関に行かざるを得ない」などの声も上がっている。 このため、市は来年1月1日から当分の間、開業医の紹介状なしに市立病院を受診する際に負担する初診料加算7000円を小児科に限って休止する。地域医療機関との機能分化のため、徴収するのが原則で、本年度は9月末までに70件の実績があった。 近藤洋介市長は28日の定例記者会見で「本来は開業医がいることが望ましいが、市民に役立つ病院として対応したい。子どもにとって今取り得る最善の策を取った」と語った。 医師の確保にも力を尽くす。新規はもちろん、既存の施設を継承して小児科の医院を開業する場合も、取得費用や医療機器の購入経費などとして1000万円を上限に補助することにした。5月の開始から申し込みはないが、手厚い支援で開業を呼びかける。 2020年の国勢調査によると、市内の年少人口(0~14歳)は8881人。5年前の前回調査から1680人も減った。少子化の流れを抑えるためにも小児医療体制の維持は急務だ。 近藤市長は「現状のままでは、5年後には市内から小児科の開業医がいなくなる恐れがある。大切な子どもの健康と安全を守り、保護者に安心を届けたい」と危機感を訴える。
河北新報