けん玉に地下足袋…昭和感漂う有田工の練習風景 選抜高校野球
けん玉に地下足袋、古タイヤ――。一見野球とは関係のない物も、使い方を工夫すればトレーニング道具になる。第94回選抜高校野球大会に出場する有田工(佐賀)は、これらの道具を使った練習を取り入れ、実力を伸ばしてきた。 【今大会のホームラン 第1号を放ったのは…】 1月下旬のグラウンド。ウオーミングアップを終えると、選手たちは一斉に地下足袋を履いてグラウンドに駆けだし、ノックなどをこなした。打撃練習の合間にはひもにつなげた古タイヤを振り回しながら、重心を落として歩く光景も見られた。帰りがけには選手たちが梅崎信司監督(42)の待つ監督室を訪れ、順番にけん玉を披露。皿に乗せられたら帰れるのがチームのルールになっており、どの選手も器用に一度で成功させ、笑顔で帰路についた。 一見するとこれらの道具は「昭和感」が漂うが、いずれも根拠を伴ったトレーニングだ。地下足袋を履くのは体を鍛える冬季限定。スパイクや運動靴と比べて足の指で踏ん張る力が必要になるため、スイングや送球時などの踏み込みの力が養われるという。タイヤを振り回しながらの歩行は体幹や手首の強化につなげている。 けん玉は膝を使って玉を上げる動作が打撃に応用できる。甲子園出場経験がある強豪の神村学園(鹿児島)が膝を柔らかくするため打撃練習の合間にけん玉を使っていることを梅崎監督が知り、取り入れた。「たしかに打撃の良い選手はけん玉もうまい。集中力も関係しているのかも」と話す。けん玉を披露しながら監督と選手の会話も弾み、コミュニケーションにも一役買っている。 梅崎監督はこれまで他県の強豪公立校などに積極的に足を運び、多くの練習法を参考にしてきた。「指導者もずっと勉強しないといけない。自分が良いと思ったものを取り入れている」とポリシーを語る。突出した選手はおらず、守り勝つ野球で初戦突破を目指す有田工。独自のトレーニングと練習方法で鍛えた体で、甲子園の舞台に臨む。【黒澤敬太郎】 ◇全31試合をライブ中継 公式サイト「センバツLIVE!」(https://mainichi.jp/koshien/senbatsu/2022)では大会期間中、全31試合を動画中継します。また、「スポーツナビ」(https://baseball.yahoo.co.jp/hsb_spring/)でも展開します。