【ブラックカレー】小宮山雄飛さんプロデュースの「渋谷ブラックカレー」が、ぐうの音も出ないほどガチだった:パリッコ『今週のハマりメシ』第126回
グラタンやコロッケなどの温かいものはきちんと熱々で、ミニトマトはひとつひとつ湯むきしてあり、魚もきちんとうまい。あらためて、さすが雄飛さんプロデュースだと感動する。 特に我々ふたりに特に好評だったのが、大根ステーキ。じっくりと煮詰めたようなとろみの、甘辛いにんにく醤油ベースのステーキソースが、やわららか大根によ?く染み込み、絶対に家でもまねしてみたい美味しさだった。 もうひとつ、この酒場食堂の最大の名物といえば、「最強!渋谷ブラックカレー」。大のカレー通である雄飛さんが、この店のため、そして出身地である渋谷の街を盛り上げるために開発し、好評すぎてレトルトカレーにまでなってしまったという逸品らしい。 ぜひ味わっておきたいが、僕とナオさんは、ふたり揃ってどこに出しても恥ずかしくないくらいの少食。さっきメニューに「少食ご飯」(100円)なんてのを発見し、大絶賛していたくらいだ。なので、フルサイズのカレーを頼んだら、ふたりでシェアしたとしても胃袋が終わってしまう可能性が高い。そんななか、メニューに「ブラックカレーの頭」(500円)を発見。これと「普通ご飯」(100円)の組み合わせならば、さすがにいけるだろう。 喜び勇んで注文し、届いたカレーのかぐわしいこと......。そして気づく。カレーのアタマと普通サイズのごはんって、それはもはや、普通のカレーなのでは? そう考えると、カレーライスの単品は1110円だから、600円のこの組み合わせ、酒場食堂における裏技的な大発見? いや、もちろん、単品カレーのほうがきっと、もっとしっかりした量があるんだろうけど、とにかく嬉しい。 そして肝心のこのカレーが、本気の本気でうまかった。雄飛さんらしいスパイス使いのこだわりはぞんぶんに感じつつ、甘みも強く、昔ながらの和風カレー的な安心感もある。そこにたっぷりのにんにくのアクセント。異常なバランス感覚だ。 カレーにはごろっと巨大な豚肉の塊も入っている。これをほおばって驚いた。歯が必要ないくらい柔らかいその肉を噛み締めると、口いっぱいに広がるのは、豚の角煮の風味。レトルトバージョンはまた違うらしいけれど、店で出しているカレーには豚の角煮を使っているらしい。これらをごはんと合わせると、もううっとりする美味しさで......。 ところでこの日、せっかくおじゃまするので、事前に雄飛さんに「〇〇日、ふたりで酒場食堂行ってこようと思いますー」と連絡をしておいた。そうしたら「本当? じゃあ顔出すよ」とのお返事をいただいてしまい、忙しい雄飛さんのことだから半信半疑でいたんだけど、1時間ほど飲んでいたら、まさかのご本人登場。 グランドフィナーレ営業のもうひとつの目玉である、「おつまみほとんど、定価に関わらず500円」というすさまじきサービスメニューのなかからおすすめを追加し、3人でさらに飲みまくるのだった。 渋谷駅前の最先端商業ビルのなかにありながら、完全にバグっているとしか思えない価格設定と、本格的な酒場体験ができる超穴場。冒頭で宣伝ではないとお伝えしたとおり、お店やレトルトカレー情報へのリンクは貼らないでおくけれど、営業期間は残りわずか。渋谷で飲むなら、本気でおすすめです。また行きたい。 取材・文・撮影/パリッコ