話題の落語家・桂二葉、自ら企画した「全席あほ」の独演会への思い「寛容な落語の世界を伝えたい」
◾️100%ピュア、「まじりっけなしのあほ」がモットー
──「本多劇場」は、二葉さんにとって初めて公演をおこなった会場ですよね。実際に舞台に出られてみていかがでしたか? 劇場そのものにパワーがあって、良い劇場やなって。終始あほな噺ということもあって、めっちゃ明るい会やったですね。ただ、この会って「あほが主役」やから、(落語の登場人物のなかでも)ボケてる方でほんまは笑ってほしいけど、お客さんはツッコミで笑うっていう。でも、最後はあほで笑っていただけたかなぁと。とってもやり甲斐がありました。 ──二葉さんがおっしゃる落語に出てくる「あほ」は、「生きる天才」という表現が近い。あくまで、相手をバカにして発する“あほ”ではありませんよね? (バカに)してないしてない!「あほ」という言葉で言ってしまっていいのかな?とも思います。(落語に出てくる)あほな人をバカにしてる人は、(実際に演じても)バカにしたようなあほになる。私なんか、大きなるまでドイツとインドのちがいもわからんかった。字ぃが似てるから。音も似てる。ほんまにわからへんかったんです。 でも母親がね、「地図見よか」言うて、全然バカにせずに教えてくれた。だから、(入門前に)いろんな噺家が演る落語のあほを観た時、負けへん!っていう感じがした。ほんまはもっとあほやけどな~って。いかにも「演じてる」あほで、ウソっぽい感じがしたんです。いつも言ってることですけど、(私は)100%のあほ、まじりっけのないあほを大事にしています。
◾️やさしく、寛容な、落語の世界を伝えたい
──「あほの大舟」は、来場される皆さんに配布する特製パンフレットも。二葉さんの持ちネタから愛すべきあほが登場する落語10本を選び、各々がいかなるあほか?を解説。 「あほ10選」と題して、あほを分類したんです。「子ほめ」と「牛ほめ」のあほはブラックな一面があるとか、「天狗さし」のあほは大阪商人らしい開拓精神があるとか。天狗のすき焼き屋をやろうっていう発想がね。肝心の天狗は(現実世界に)いぃひんけど、このあほはいつか億稼げるくらいの人ちゃうか!?とか(笑)。言語化すると、あほにもいろいろあることがわかったりして。 ──パンフレットは、いわばお品書きのような。10選から披露される演目は当日のお楽しみ? そうですね。(大阪公演の演目は)まだ決まってなくて。当日、何をやりたいか?っていう気分次第で。あとはなんか・・・。最近、えぇ子が多いからね。若い人でもねぇ。生きるのに気ぃ使たはる人、多いじゃないですか。もうちょっとこぅ、なんか・・・「素で」しゃべってもいいやん!って思う。あほなこと言うても大丈夫。そういうメッセージもいちおう込めて。 ──なんとなく、あほでは居づらい世の中ですもんね・・・。 落語って、すごくやさしい世界。寛容で。それがすごく良いなぁって思うから。 ──みんながそれぞれの存在を認め合う、まさに多様性の世界。 そうなんです。「こいつ、しゃあないやっちゃなぁ」って言いながら、見離すことなく付き合い続けて。 ──だからこそ、あほがのびのびと生きることができる。大阪公演も迫ってきましたが、意気込みはいかがですか? 全然ちゃうからね、東京とはお客さんの反応が。大阪はやっぱりホームやから。(あほを)存分に浴びてほしい。一緒にジェットコースター乗る!っていう感じで。この会はこれからも2年に1回くらいやりたいなぁと。またこの季節来たな!みたいなイベントになったらなぁと思っています。 ◇ 『あほの大舟』は12月23日・24日の2日間、大阪の「ABCホール」で開催される。